午後のセッションは、「束縛感」にかかわる過去生に行こう、ということだった。
 th「束縛感は、どのあたりにありますか」
 森「胸のあたりです」
 th「その感じに入り口がついていると想定して、その感じの中に入って見よう」。
 中に入ると、空気がざわざわしていた。

(場面1)
 市場のよう。土ぼこりまじりで、乾いている。
 th「肌はどう」。thは、宇宙人も想定し、そうであっても差し支えないような質問をしたが、褐色の肌の地球人のようであった。
 th「(西暦)何年ですか」
 1256年、と頭に浮かんだが、学者のはしくれとして根拠のないことを明言するのは気が引ける。1250年代、と答えた。中東からパキスタンまでの間の国で、皆はベージュや白のだぼっとした衣服。自分は10代後半で、自分だけ黒っぽい、どうでも良さげな破れた服。
 th「周りの人に、あなたは見えているの」
 森「見えています。けど、なるべく見ないようにしています。」
 th「なぜですか」
 森「不吉だからです。」
 th「あなた自身はどう思っているの」
 森「そう思われて当然だと思っています。なるだけ気配を出さないようにしています。」

 thは、その人生での別の重要な場面に行きますよ、と誘導した。
(場面2)
 自分は、1、2歳ぐらいで、もらわれてきた男児。
 th「誰が世話してくれていますか」
 森「女の人がいます」
 th「誰に似ていますか。」。thからは事前に、今生でも出会っている人は、顔や雰囲気が似ているものだと聞いていた。
 森「強いて言えば顔は母‥」
 th「他には?」
 森「その人のだんなさんがいます。」
 th「誰かに似ていますか。」
 森「夫に似ている気がします。」
 th「あなたは、どう感じているの」
 森「もらわれてきたからには、仕事をできるようになろう。と思っています。」

(場面3)
 6、7歳ぐらいの場面。風が吹き渡る丘の上で、何かの修行をしている。
 th「何か、道具を使っているの?」
 森「‥何の道具も要りません。空気の流れを読み取って、空気の流れで‥。」はっきり分かった。「人を殺すんです。」
 傍らに年取った男性が座っていて、私を見守って教えてくれている。
 th「誰か似ている人はいますか」
 ‥。
 私の周りで、風の流れが読めてそれを教える人なんて、一人しか居ない。
 森「少し似ているけど‥分かりません。ずいぶん(本人よりも)細くて、背が高いようですし‥」私は否定した。なんせ認めてしまうと、私がこの世で尊敬しているその人も、殺し屋ということになってしまう。

 わかってきたことには、私たちは、その国の中で、一定の人数がいなければならないと考えられていた職業だった。
 悪事を尽くして他人から「死んでほしい」と思われている人について、政府が依頼を送ってくる。すると私たちは丘に登り、空気に注意を向けていく。うまくいくと、空中に、細いリボン状のものが浮かんできて白金色に光る。それは、恨みを持つ人達の念が、形を成したものだ。
 そこまで見えれば、あとは少し手を加えるだけで、その白金の細いものが罪人の首を切り、罪人は痛みを感じる間もないぐらい瞬時に死ぬ。
 事が終わると、空気がすっと落ち着く。
 それが、その仕事が意義あるものだったという証だ。
 年に数件の依頼をこなした。

*************
 私は、空気を読んでいくときの独特な感覚に圧倒された。
 その感覚は、フォーカシングのリスナーをするときの感覚に少し似ている。
 フォーカサー(体験者)が自分の内側に、精妙に注意を向けていくとき、その人は周囲の空気を浄化し、空気がよい香りになっていく(注:本当です!)。そうした空気を享受しているとき、私は、生きている中で今最も至福のときにあり、これ以上の喜びはない、と思うのだ。
 ただそれは、「副産物として享受させていただく」ものであって、「それを自分のために目指す」べきではないし、「それを用いて何かをする」ものではない。

 一方で、過去生の私は、それを感じるだけでなく、何か作用を起こして操っていたということになる。
 面接室とは比べ物にならない大きさの、空全体を感じ取る。そして何かを起こそうとしていくときの感覚。
 この世を掌握しているというほどの高揚感だった。
*************

(場面4)
 18歳ぐらい。15歳の奥さんが居る。奥さんも自分(森川の前生)。
 奥さんは同じ仕事。仕事で得られる圧倒的な高揚感が好きでたまらず、技術に誇りと自信を持っている。無邪気にその喜びを語る奥さんのことが、かわいくて仕方が無いけれど、(何かがおかしい、この仕事をそんなに喜んでいいものだろうか)と自分は心が曇る。

(場面5)
 30歳ぐらい。丘の上で悩んでいる。5歳ぐらいの男児ができた(今生で似ている人はいない)。子どもも同じ仕事だが、奥さんに輪をかけたような人で、自己の力を振りかざしている。自分は、益々違和感に苛まれていく。
 でもどうしていいか分からない。自分は物心ついたときからここに居るから、この世界しか知らない。‥




☆ 催眠療法体験記(3) 序

☆ 催眠療法体験記(3) 主訴

☆ 催眠療法体験記(3) #1

☆ 催眠療法体験記(3) #2−1

☆ 催眠療法体験記(3) #2−2

☆ 催眠療法体験記(3) その後

☆ 催眠療法体験記(3) #3

☆ 催眠療法体験記(3) #4−1

☆ 催眠療法体験記(3) #4−2

☆ 催眠療法体験記(3) 結




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