(一社)日本機械学会 ロボティクス・メカトロニクス部門主催 九州地区競技会

フューチャードリーム!ロボメカ・デザインコンペ2021

■審査員総評


審査委員長 長谷川 泰久(名古屋大学 未来社会創造機構 ナノライフシステム研究所 教授(ロボメカ部門 部門長))
 ロボティクス・メカトロニクスによって日本を支え、新しい社会を築きたいといった思いから、昨年に引き続きデザインコンペのテーマを、「健康、教育、観光、地域産業の振興に貢献するテレオペレーション、テレロボティクスのための独創的ロボメカデザイン」としました。 今回は、最近話題となっているプラスチックごみ問題や地域産業である観光業に貢献する提案に加え、コロナ禍で生じた社会問題を解決しつつ地域の振興に貢献する提案もありました。 現場のニーズ調査から、それを解決する皆さんのアイデア、更に、そのアイデアを具現化したモックアップなど、どれをとっても大変完成度が高く、インパクトのある動画を活用したプレゼンを楽しく拝見しました。 テーマであるテレオペレーションやテレロボティクスが益々発展し社会実装されれば、人やモノの移動時間の削減による時間の有効活用、移動時の事故リスクの低減、実際の移動を必要としないことによるカーボンニュートラルへ貢献できると思います。 これらのアイデアを更に推し進め、社会問題解決に貢献されることを期待しております。 それでは以下に、チーム毎の感想を述べさせて頂きます。

<F.Labo(大分大学):配管清掃「FUJI]>
 大分県の地域産業である温泉にて、毎日行われ単純かつ重労働な配管内清掃作業をロボットで置き換えることに賛同しました。 製作されたモックアップも、実寸より3倍程度大きいモノでしたが、綺麗に製作されておりました。 曲がった配管への対応も既に考慮されており、完成度の点でも評価できました。 先端のブラシを駆動する時の反力などによるロボット姿勢の安定性や、ロボット全体の移動について見積もりがあると現実味が更に増すと思いました。 最優秀賞おめでとうございました。

<Phasor(日本文理大学・名桜大学・千葉工業大学・九州工業大学):絆をつなぐ空間構築ロボ「With」>
 コロナ禍によって生じた孤立の問題に対して、空間触覚提示と音像定位制御を用いたファントムを人に感じさせる提案は、問題解決に効果的なアプローチで、かつ実用性の高い提案と思われました。 超音波トランスデューサを用いた提示力の実験や会場でのデモなど、定量的な評価に1歩踏み入れている点も高く評価できました。 今回の提案をシステムとして具現化できると、より社会にインパクトのあるものになるかと思います。 優秀賞おめでとうございます。

<16年連続16度目の挑戦(福岡大学・九州大学):博多・Theちょう>
 コロナで約8割の売り上げ減となった博多座に対して、遠隔にて演劇鑑賞を可能とするデバイスとして、自由な視点を提供するドローンより、ずっと静粛な蝶の羽ばたき機構とセレーションを採用した飛行ロボットを提案されました。 更に、フレキシブルモニターによる擬態によるオクルージョン回避や、衝突回避しながら画角の自由選択ができる機能、画角の評価を共有できる情報サイトなど、深く検討され、今年のテーマにも合致した魅力的な提案でした。

<KMT(久留米工業高等専門学校):農作物用ロボット「キャリぞう・バードローン」>
 SDGsへの関連も明確化されており、視野の広さも評価できると思います。 また、モックアップが細部まで作り込まれ、ビデオによる紹介も判りやすいものでした。 タブレットを用いた文字でロボット作業を指示する操作インタフェースも計画され、利用者の利便性への配慮も評価できます。 今回のロボットの持つ機能が多岐にわたりますが、機能間の相乗効果について強調されるのもより良くなると思います。

<Crab・Club(九州産業大学):遠隔操作型海底用ごみ拾いロボット「クリーン・クラブ」>
 海洋ごみの回収といった社会で着目されている問題に対して、遠隔操作によってゴミを発見・回収するロボットは、コスト面からも競争力があり、ダイバーへの安全性も配慮された提案でした。 海底という極限環境での作業をテレオペレーションにて対処する点やアームによるペットボトルの回収もリーズナブルなものでした。 広大な海の中でゴミの発見の効率化と様々な形状のゴミ回収方法について検討されるとより良いと思います。

<祖父母の腰を守り隊(宮崎大学):荷台可変式搬送ロボット「キュービック」>
 農作物を傷めず搬送する全方向ロボットのモックアップを用いた動画は、農作物を落とさない機能が大変わかりやすく、ハードウエアのデザインも完成度が高く、印象的でした。 野菜を取り扱う荷台の機構設計・製作と性能評価まで行われていることに感心しました。 実際の農家の方の日常の労働での搬送ロボットの腰痛予防効果について見積もられていると更に説得力がますと思います。


審査委員 田中 久生(福岡市科学館 サイエンスコミュニケーター)
 昨年に引き続き,各チームが独自の課題を見つけ出し,その課題を解決できるような提案でした。 課題の分析も,思い込みではなくデータをもとにしっかりと考えられており,説得力を感じました。 解決するためのアイデアも,実現できそうなロボットから包括的な解決を考えたロボットまで,多種多様で興味を強く引き付けられました。 また昨年同様,二次審査がweb開催でしたが,参加者の皆さんのweb会議のスキルも向上しているのを感じました。

<F.Labo(大分大学):配管清掃「FUJI]>
 温泉の配管清掃という,地域独自の課題を設定されていて非常に興味深かったです。 提案のロボットは,課題を把握されていたのでその解決と,小さいサイズのロボットもあると施設だけでなく家庭でも利用できるのではと考えました。

<Phasor(日本文理大学・名桜大学・千葉工業大学・九州工業大学):絆をつなぐ空間構築ロボ「With」>
 この課題は,web会議が増えた現在の状況をよくとらえていると感じました。 音波を利用して触覚にうったえるというアイデアが興味深いうえ,モックアップもしっかりと出来ており,このアイデアの完成品は自宅に欲しいと思いました。 ぜひとも実現してほしいアイデアです。

<16年連続16度目の挑戦(福岡大学・九州大学):博多・Theちょう>
 コロナによって非常に影響を受けたエンターテインメントのための解決アイデアでした。 公演の邪魔にならないためのフレキシブルモニターや騒音対策のアイデアなど,非常に独創的でした。
 想定されるロボットのサイズや使用方法などをさらに考察できると,博多座だけでなくいろいろな会場でも力を発揮できるアイデアと思いました。

<KMT(久留米工業高等専門学校):農作物用ロボット「キャリぞう・バードローン」>
 農業関係の負担を減らすためのアイデアでした。目的もSDGsから考えられ,肥料や水やりだけでなく,草むしりや肥料の精製や収穫など機能盛りだくさんでした。 ただ,収穫したものをどのように人に渡すのかなど,一つ一つのアイデアについて人も交えた考察をし,プレゼンテーションされると実現に向けてよりイメージがしやすかったと感じます。

<Crab・Club(九州産業大学):遠隔操作型海底用ごみ拾いロボット「クリーン・クラブ」>
 ごみの比重やダイバーのコスト問題からもしっかりと課題を考えられた,海洋問題を解決するためのアイデアでした。 ごみをいくつも確保できるようにとったごみの固定する方法や多様なごみにも対応できるように拾う方法などを考察があるとさらに魅力的なアイデアになると思います。

<祖父母の腰を守り隊(宮崎大学):荷台可変式搬送ロボット「キュービック」>
 課題の設定と分析がしっかりとされていました。ロボットの仕組みについては,動画も用いたプレゼンテーションやモックアップで非常に分かりやすかったです。 ただ,荷物の積み下ろし方法など,このロボットと人の行動をさらに考えて設計や説明があれば,ぜひとも実現したいアイデアになると思います。


審査委員 加藤 優(九州産業大学芸術学部 非常勤講師)
 今回は審査員によって評価が分かれ、また最優秀賞、優秀賞は審査員の評価点合計が同じ結果となるなど各学校の訴求力にバラエティが感じられる大会であったように思えます。 日本文理大学は昨年同様に複数の大学とのコラボを行い、また福岡大学も九州大学とのコラボを試みていました。 このような動き、試み、企みが次年度は加速度を持って進むことを期待したいと思っています。 モデルを見て感じたのですが、どこも3Dプリンターで作り易い造形(円筒や直方体などの簡単な立体の組み合わせ)のデザインに陥ってはいないでしょうか。 順番が逆です。望ましい形・デザインを追求したのちにモデル製作の方法を考えましょう。 モデルは簡易モデルで完成形は画の表現でも良いと思います(完成画のことをレンダリングと言います)。 次年度はぜひ芸術系の学生を巻き込み、カッコ良いレンダリングも描きましょう。

<F.Labo(大分大学):配管清掃「FUJI]>
 温泉の配管の清掃というニッチですが大分県の観光という地域産業の問題に取り組んだ面白い提案だと思います。 狭い配管内の移動と清掃という2つの明確な機能に伴う課題に取り組んだわけですが、この場合はまず簡易な実証モデルで確認するという手段を初期に取るべきであったかと思います。 躯体が管内で正常な位置(姿勢)に保持されるか、移動できるか、清掃時(頂部回転時)に躯体は反対側に回転しないか(作用反作用)、確認すべき項目は最初から明らかだったろうと思います。 プレゼンテーションでは正直に作製モデルが思ったように動かず残課題があるとし解決策にも触れていました。 現状は機構的には未完成ですが反省も踏まえた研究開発姿勢が高い評価につながったのではないでしょうか。 また富士山と木製風呂桶というデザインは温泉や銭湯にピッタリで、風呂場にそのまま置いておけるさりげない収納性もアピールするかもしれませんね。 最優秀賞おめでとうございます。

<Phasor(日本文理大学・名桜大学・千葉工業大学・九州工業大学):絆をつなぐ空間構築ロボ「With」>
 アバターロボットの「ファントム化」という意味が分からなかったのですが、遠隔授業での問題点に焦点を当てた絆を繋ぐための空間を構築するというアイデアは多くの大学生の切実なまさに現実の問題を解決するもので大変良い提案だと思いました。 その空間構築のための装置・技術についてモデルを作り実証実験を行い、効果を確かめるところまで行っており実用性・実現性についての説得力も持つプレゼンテーションだったと思います。 ただファントム化といっても装置は存在して見えるのではないのでしょうか。 それらの装置を上手くディスプレーとともにデザイン(カバーリング)すれば一体感をさらに感じさせる何かになったのではないかと惜しまれます。 ゆえに私の造形点は辛くなったのですが、昨年に引き続いての優秀賞おめでとうございます。

<16年連続16度目の挑戦(福岡大学・九州大学):博多・Theちょう>
 擬態する羽によるはばたき機構を有するドローン、とハードの面白さを最初に感じた提案でした。 本当のはばたき機構による飛行装置は相当に難しいと思いますが考え方は魅力的です。 ただ擬態で本当に見えなくなってしまうのであれば形は蝶でなくとも良いということになり、この場合は擬態でほのかに劇場に溶け込んだ複数の蝶(ドローン)が観客の視界に入りながらも不思議な空間を創り上げ、それを劇場にいる観客やドローンから見ている劇場外の観客がどちらも楽しめるにはどういう運用が良いか、などの観客の視点からの考察がもっと必要ではなかったかと思いました。 しかしテーマの選定はユニークで17度目の挑戦に期待は高まるばかりです。

<KMT(久留米工業高等専門学校):農作物用ロボット「キャリぞう・バードローン」>
 商品にならなかった作物の廃棄問題を堆肥の生成に活用して解決しようというアイデアが、水やり機能も持つ農作物の運搬ロボットと合体し、さらにそれは農作物収穫機能を持つドローンを格納搭載して一体運用されるという本当にこんなのがあったらいいなという大変夢のある提案(これが一番大事ですよね!)だったと思います。 盛りだくさんですが一つ一つの機能について真面目に考えたことも提案書から伺えました。 力強さから採用したという象の顔のデザインとネーミングも初々しさ(良い意味)を感じます。 欲を言えば機能を少し絞りさらに深掘りしてゆくと構造や部品の配置、容量、さらには全体デザインまでより実現への説得力が増す提案になったのではないかと思います。

<Crab・Club(九州産業大学):遠隔操作型海底用ごみ拾いロボット「クリーン・クラブ」>
 海洋ゴミの問題は分かりやすいテーマだけにどのように独創的な発想が見られるかとの期待がありました。 「海底にある、或いは埋まったプラスチックゴミを回収する海底を走行するロボット」というコンセプトが設定されたのですから、「ゴミの回収」「海底走行」という課題の解決が必要です。 それぞれ「格子状のかご付きのアーム」「凹凸のついたタイヤ+補助プロペラ」というアイデアでしたが少し発想が普通かなと感じます。 「ごみは自分で持ち帰る」をイメージしたダストボックスのデザインなどユニークな視点もあるのですから機構的にももっと柔軟に未来的な発想で望んでも良かったのではないかと思います。 海といっても千差万別なので香椎浜、或いは博多湾など身近な環境に限定して現地現物調査なども行うと机上では得られない具体的なヒント、発想をもたらしてくれるのではないかと思います。

<祖父母の腰を守り隊(宮崎大学):荷台可変式搬送ロボット「キュービック」>
 プレゼンテーションは理路整然と3つの課題毎に解決法が説明され分かりやすい良いものでした。 フレーム構造の荷台の無骨さの中に顔のキャラクターや手のイメージの昇降機構?がある可愛いデザインは農作業する人を和ませ愛着ある道具として使ってもらえそうですね。 課題の中で規格外の野菜が20%というのは全てコンテナ運搬中の落下によるものなのでしょうか。だとすると大きな問題ですね。 「運搬時の揺れ」だけではなく落下を防ぐ他の解決法も必要な気がします。 メカナムホイールによる全方位移動、X軸Y軸の自在スライドバーによるコンテナ固定も優れた発想だと思いますし研究室での検証はなされていますが、実際に実地で機能するだろうかというもう一段の洞察があったらと感じます(もっとシンプルで有効な解決策があるのではないかと思います)。 身体への負荷も、今回の提案により作業姿勢がこのように変わって楽になったなどのロボットの寸法と作業者の姿勢との関係が(図的に)明らかであるともっと説得力が増したのではないかと思いますが、私の中では一番の評価でした。


審査委員 筬島 修三(一般社団法人九州経済連合会 産業振興部長)
 昨年に引き続き、リモートでの開催となりました。学生の皆さんは日々の授業についてもリモート対応がほとんどでしょうし、かなりこなれた様子で、結構スムーズに運営できたのではないでしょうか。
 今回のコンペは、ユニークなアイデア・デザインが多く、各審査員の好みで点数のばらつきが非常に大きく、結果として、かなり僅差での勝負となり、6チームとも大接戦の2021大会となりました。
 すべてがコロナ前と全く同じ状態になるとは思えず、リアルとネット(サイバー)の融合など、すごいスピードで社会変革が起こるのではないかと予想されます。 ぜひ皆さんの若い感性で、シン・ニホンを創り上げていってください。

<F.Labo(大分大学):配管清掃「FUJI]>
 デザインの勝利でしょう。 富士山のイメージした造形は、温泉配管清掃ロボにはぴったりはまりました。 桶のモチーフもよかったです。 旅館はもちろん、温泉をひく一般家庭にも重宝されそうですね。

<Phasor(日本文理大学・名桜大学・千葉工業大学・九州工業大学):絆をつなぐ空間構築ロボ「With」>
 まさに学生の皆さんの抱える足元の課題をとりあげ、それを解決する面白いアイデアでした。 モックアップもリアル感があり、そこが評価の高い点でした。 惜しくも優秀賞でしたが、ほとんど差のない2位でした。すばらしかったです。

<16年連続16度目の挑戦(福岡大学・九州大学):博多・Theちょう>
 コロナで打撃を受けたエンタメ業界にフォーカスしたアイデアでした。 リアルとネットのハイブリッド型を想定し、その解決策をプレゼンされたのは、間違ってないと思います。 ドローンの消音化への対応、最適数、確実な制御あたりがもっと説得力があったら、悲願達成できたのではと思ってます。 毎年の決まり文句になってますが、「来年はぜひ優勝目指して」。

<KMT(久留米工業高等専門学校):農作物用ロボット「キャリぞう・バードローン」>
 これも農業の作業軽減ロボ。収穫、肥料・水やり、草むしりを空と陸からやるというアイデア。 少し欲張りすぎた感もあり、また企画書には、鳥獣による農作物被害があったのに、それへの対応がないような。 機能を絞り込んだほうがよかったかもしれません。

<Crab・Club(九州産業大学):遠隔操作型海底用ごみ拾いロボット「クリーン・クラブ」>
 海底に沈むプラスチックごみ回収ロボの提案でした。デザインはかわいかったのですが、積載効率が非常に悪いのではなかろうかとの印象を受けました。 プレゼン資料にはペットボトルがあったのですが、であれば余計に詰め込めないのでは?と。 つぶす(小さくする)工程を入れるとかするとさらに実現性が上がったような気がします。

<祖父母の腰を守り隊(宮崎大学):荷台可変式搬送ロボット「キュービック」>
 農業はそこの土地で営むもので、そこの就農者が増えれば事前にその地域の人口も増え、地域の活気が戻ると思います。 そのためには、働く人たちの負担を軽減することが不可欠です。 そういう点から「腰痛」を軽減させるこのアイデアは興味深いものでした。 移動時プラスさらなる省力化の仕掛けがあればなと思いました。


審査委員 永里 壮一(メカトラックス株式会社 代表取締役)
 昨年に続くコロナ禍で、今年もリモートでのプレゼン拝聴となり残念でしたが、非常に興味深く拝見いたしました。
 当日のコメントでもお伝えしましたが、審査員のバックグラウンドは様々なので、技術系の人は技術的な実現可能性が高いような提案であれば、技術のより細部に対して評価をしますし、技術的な実現度が低くてもアイデアや社会性を評価される審査員もいらっしゃいます。
 その辺の塩梅はなかなか難しいところかとは思いますが、今回最優秀賞のチーム「F.Labo」のように双方バランスの良い内容が評価されるのは事実かと。 とはいえ、かなり僅差であったことも事実で、最優秀賞、優秀賞、佳作にかかわらず胸を張って良い結果と思います。

<F.Labo(大分大学):配管清掃「FUJI]>
・製作背景の説明がシンプルで分かりやすい。
・配管サイズに合わせて可変する機構のアイデアは面白い。
・サイズ調整の機構がモックアップで実現されていて良かった。
・ただ、もう少し作りこまれたデモが見たかった。(アイデアが良いので逆に物足りなく感じる)
・デモ動作(動画)はもう少し頑張ってほしかっ。た(アイデアが良いので逆にもったいない印象)
・とはいえ、企画・デモ・プレゼンなどバランスよく素晴らしい内容でした!

<Phasor(日本文理大学・名桜大学・千葉工業大学・九州工業大学):絆をつなぐ空間構築ロボ「With」>
・背景、課題の説明が分かりやすかった、テーマにもマッチしている
・アバタロボットのファントム化 ← かっこいいキャッチフレーズ、こういうコピー大事と思います。
・ロボットの仮想化とは哲学的な発想で個人的に大好きです!
・複数大学でのチームつくりは良かった
・音響技術で仮想空間の臨場感UPの発想はとても面白い
・超音波による空中触覚提示技術もとても面白い、モックアップも面白い(実際に会場で体験できて良かった)
・メカトラックス賞おめでとうございます!!

<16年連続16度目の挑戦(福岡大学・九州大学):博多・Theちょう>
・背景、目的が具体的でわかりやすい、テーマにもマッチしている。
・博多座にドローンを入れるために必要な技術的な課題は分かるが、もう少し実現可能性の高い技術を選択してほしかった。
・はばたき機構の実現可能性が心配、セレーションでの騒音低減についてデモやより詳しい説明が欲しかった。
・擬態のアイデアは斬新で面白い。(環境に溶け込む、光学迷彩?)
・NumberbestとLikebestの考え方は面白いが、もう少しアルゴリズムの説明が欲しかった。
・社会的意義、アイデアは高評価だったのですが、技術的実現性の採点が伸びなくて、審査で評価が割れました。技術部分の説明がより丁寧であれば最優秀賞だったと思います。

<KMT(久留米工業高等専門学校):農作物用ロボット「キャリぞう・バードローン」>
・目的がちょと欲張りすぎで、もう少しフォーカスした方が良い。(SDGsのからみを頑張りすぎた?)
・2種類のロボットを目的に応じて使い分ける発送は良かった。(1種類で全部やるのは大変なので)
・動画にナレーションが欲しい。(もしくは説明テキスト、プレゼン時の補足説明など)
・タブレット使った対話式の操作インターフェースは実用性が高そうで良かった。
・バードローンが作物回収する部分の説明がもう少し欲しかった。(果樹をドローンでやるのはタイヘンそう)

<Crab・Club(九州産業大学):遠隔操作型海底用ごみ拾いロボット「クリーン・クラブ」>
・プレゼンがおちついてゆっくり話ができていて良かった。
・着眼点(海底ごみはダイバーがやってるので自動化したい)は良い。
・比較対象の既存の方法(ダイバーが回収)に人件費が入ってない(事業全体で考えると、人件費が一番高くなると思います)。
・砂ごと救い上げてごみ回収ができるのか、実験結果などが欲しかった。
・有線で操作なら、バッテリーは不要では?(有線で電源供給できるので)
・このロボット自体が広告塔となってゴミ問題を周知する視点は面白い(ゴミが発生しないのがイチバンなので)。

<祖父母の腰を守り隊(宮崎大学):荷台可変式搬送ロボット「キュービック」>
・プレゼンが全体的に丁寧で分かりやすかった。
・課題についての調査、説明が分かりやすかった。
・ネーミングの背景(Oの3乗)が分かってかっこよい(覚えてもらうためにも大事)。
・モックが具体的で分かりやすい。
・荷台可変機構の説明が丁寧、ただ機構でやらずにエアバック的に膨らませて固定とかだとよりシンプルだったり?
・実際にデモ機が動作しているのが動画で確認できて良かった。
・実際の稼働時の人とロボットのかかわりが分かりにくかった。(操作者は誰?どう楽になる?)


審査委員 田名部 徹朗(株式会社 三松 代表取締役)
 本コンペは、毎回ですが農林水産業から観光文化的な要素まで多岐にわたったテーマが取り上げられ、私の知らない九州各地の課題に大いに勉強させていただいています。  発表内容は、近年拮抗し各チームとも優劣つけがたいことは審査員として頭の痛いところではありますが、テーマ分析はもちろんのことロボメカ開発にあたってもきちんと要素試験や分析・検証も行って設計を実現性の高いものに引き上げておられ、コロナ禍での対人接触の制限等で限られた時間の中でチーム一丸となって頑張っておられる姿が垣間見られ感動いたしました。 このコンペを通じて経験し体験されたことは、今後の社会に出てもきっと役に立てるレベルのことを皆さん成し遂げられたと思います。 また来年どこのチームに三松賞を授与できるか楽しみにしています。

<F.Labo(大分大学):配管清掃「FUJI]>
  優勝おめでとうございます。 例年大分大学のテーマ選定はお土地柄をよく反映された内容が多いのですが、今回も流石の課題選択であったと感心しています。 また、温泉=富士山をイメージしたデザインやプレゼンにおける「配管も快感」というキャッチーなコピーも好感が持てました。 何よりもロボットの要素試験をかなり入念に行われていたことは、本テーマの実現性を担保するに足りうる取組でした。 本当に実現に向けてがんばっていただきたいと思うとともに、温泉配管以外の配管清掃でも活躍できる可能性も秘めた技術として評価されると思います。 今後もっと極めていただきたいです。

<Phasor(日本文理大学・名桜大学・千葉工業大学・九州工業大学):絆をつなぐ空間構築ロボ「With」>
  僅差で残念でしたが準優勝おめでとうございます。 チームメンバーが分散しているハンディを克服し、コロナ禍でまさに今学生が抱えている孤独という課題、というより悩みをテーマに取り上げたことがより我々にとっても身近なテーマとして感じられ良かったと思います。 さらに、これを解決していく手段として音響や超音波から「空中触覚技術」「音像定位制御」を使った空間や存在感認識等非常に技術的にも優れたアプローチで課題解決を図ろうとされた試みは今回の応募された中では正直一番ではなかったと思います。 惜しみなくは、ロボメカ・デザインコンペという特筆上メカ的な部分が弱かったのが優勝を逃された理由ではないかと思っています。 世の中すべてのリモート空間で感じている一体感のなさを、この技術でぜひ解決していただきたいものです。

<16年連続16度目の挑戦(福岡大学・九州大学):博多・Theちょう>
  農林水産業に関するテーマが多い本コンペの中で、観光・地域振興の観点から「博多座」の営業問題をテーマにあげた点は非常に興味がわき、また気づきにくい事実から地域振興につなげていくための方策を考えられた点で秀逸だったと思います。 ただ、あの蝶が博多座の観客の前で100機も飛んだら目障りであるとは思いましたが、まずデザインがきれい。 騒音にに対する羽ばたき機構、視覚効果を狙ったフレキシブルモニターやAIによる色決め。 全国からのネットを通じて参加できる利便性等課題解決に向けた設計思想がきめ細かく考えられており、実現性の高さを感じることのできるテーマ発表でした。 ぜひ博多座を盛り上げて、博多の街振興を実現させてください。
 最後に、今年は例年に比べ定番のパフォーマンスに雑さが見られたのもある意味敗因の一つと思います。 逆に課題解決プレゼンよりパフォーマンスを例年並みに充実されれば次回はいよいよ優勝が近いと思います。次回に向けて精進してください。

<KMT(久留米工業高等専門学校):農作物用ロボット「キャリぞう・バードローン」>
  三松賞受賞おめでとうございます。 高齢化で減少が進む農業に追い打ちをかけるように鳥獣による農作物被害が増加しているというテーマ選定は漠然とした農業課題解決の中でテーマをしっかりと絞った点で評価させていただきました。 ただし、課題解決のための機器開発においてテーマが総花的で多岐にまたがり過ぎていたこともあり、せっかくの課題解決方法が個々の技術的な難易度の高さのために実現が難しいと思えてしまったのが残念でした。 キャリぞうにコンポスト機能や肥料散布、水やり、運搬と多機能なことは素晴らしいのですが、どれか1〜2個に絞って検討できれば技術的に実現可能と思いますし、高齢農家の負担軽減は十分成し遂げられるはずです。 課題の絞り込みを行っていけば優勝も目指せるいいテーマになったと思います。 とはいえ、三松賞は、たぶんそういった指摘があっても自分たちは全部解決するのだという貪欲な思いから今回のテーマ発表を行われたと思い選出させていただきました。 ロボメカデザインの視点では機能性・デザイン性、そして技術的にカバーできていない点も多く、これらを更に煮詰めてぜひ実現に向けてプランを磨き上げていただきたいと思います。 今後に大いに期待しています。がんばってください。

<Crab・Club(九州産業大学):遠隔操作型海底用ごみ拾いロボット「クリーン・クラブ」>
  海洋汚染は九州だけでなく世界的な問題です。テーマの選定としては申し分ないと思いました。 また、対象作業や対象物についての現行でのコスト計算、リスク分析等ライセンス性も含めて分析を入念に行われていたことは課題解決の一番大切な点ですので好感が持てました。 ただし、これらの課題解決を実現するための装置開発においては、ショベル形状、動力源がスクリュー1個だけなど更なる検討の余地が多く、前半の課題分析ほどのち密さが感じられなかった点が非常に残念でした。 分析された投資効果の検証を含めてロボットの機能コンセプトを固めれば、より有意義な発表ができたと思います。

<祖父母の腰を守り隊(宮崎大学):荷台可変式搬送ロボット「キュービック」>
  高齢化で衰退が進んでいる農業の支援において、腰痛防止は人に対する優しさを現したテーマ選定で良かったと思います。 また、コンテナの固定方法の要素試験等設計の初動における対応としてはきちんとテーマを実現に導くアプローチをされていたと思います。 1つ1つの技術は実際に他の分野でも応用ができるものも多く、基礎研究としても素晴らしかったのですが、やはり高齢農業従事者の腰痛防止という課題解決において、すべての問題をクリアにできるまでの機器設計には至っておらず(荷下ろしは人力で行うまま等)、課題解決の隅々にまで気を配った基本設計を十二分に行っていればもっと素晴らしい提案ができたのではないかと思います。 更なるブラッシュアップを期待しています。