2004年7月28日〜8月1日までの5日間、APAがハワイのホノルルで開催されました。(私は仕事の都合で、そのうちの7月29日〜7月31日に参加しました。)
英語がろくにできない私は、2004年だとハワイの開催で料金的にも行きやすく、さらに大学から英語ペラペラの同僚、平井達也氏も行くということで、初体験するなら今しかない!と、便乗した次第です。
我が九州産業大学臨床心理コースの大学院生も5名参加し、にぎやかな旅となりました。





1.APAとは

APAとはAmerican Psychological Association。「アメリカ心理学会」。心理学のあらゆる分野を包括する大きな学会だ。
日本で同様の学会といえば、「日本心理学会」だろう。しかし、アメリカは臨床心理学の学者が多いので、APAの発表内容的には、「日本心理学会」と「日本臨床心理学会」の中間ぐらいの内容と言ってよいという印象を受けた。
どんな学問テーマが含まれるかをもう少し詳しく知るには、APAのホームページで、「Division」を見てみると分かる。APAには、1から54までのDivision(領域)が含まれてる。

もう少し臨床心理学的な学会へを望むならば、ACA(American Counseling Association、アメリカカウンセリング学会)がそれにあたるそうだ。ただしACAはカウンセリングの学会で、それとは別にサイコセラピーの学会がある。さらに、専門分野(学生相談とか、トラウマとか)の学会もあるから、どこが自分に合うかは、よくよく調べてから行ったほうがいいらしい。






2 受付

アメリカらしいといえばらしいのかもしれないが、私たちは申し込んだにもかかわらず出発までにプログラムや参加証が郵送されてこなかった。平井氏に交渉してもらってその場で参加証やプログラムをもらった。平井氏に感謝。
もらったプログラムには、発表題目と演者など最低限のことしか載っていない。それでも電話帳ぐらいの分厚さ。よってレジュメが載った抄録集のようなものはない。題目だけで判断して聴きに行く会場を選ぶ。








↑学会会場では朝食、昼食を売っていた。パンやサンドイッチ、コーンフレーク、まるごと果物など。



3 形式

題目は朝6:30から夜19:00頃まであるが、多くは8:00〜14:00の間に集中していた。これは、涼しい午前中に学会を行って、午後はハワイで遊んでくださいという計らいだったかもしれない。
コマの多くは50分セッションで、8:00〜8:50、9:00〜9:50、‥12:00〜12:50、‥というふうに進んで特にお昼休みはない。
主な形式は以下のとおり。

Symposium この形式のコマが一番多かった。
50分なり110分なりの枠まるまる一つ使い、一つのテーマをめぐって複数の人が自分の視点を発表する形式。4人とか6人で、それぞれ15分ずつぐらい語っていた。
発表者達は仲間同士で、座長も仲間内で立てていた。
Paper session この形式のコマ自体が少なかったので私は出ていないが、見に行った院生によると、いわゆるふつうの学会発表で、演者が入れ替わり立ち替わり、15分ぐらいずつ発表していたそうだ。原稿を読み上げる感じで、盛り上がりに欠けていたとのこと。
Poster session これも日本と同じ。
びっくりしたのは、発表者が用事で来れなくて代わりの人にポスターを貼ってもらっている、という状態がちらほらあったこと。代理の人がポスターの番をしていて、誰かから質問されると、「I’m sorry、I can’t answer any questions.Because I’m just ’baby sitting’」なんて言ってた。
‥そんなんでいいのか?!
Workshop 技法習得系の魅力的な題目だな、と思って見るとワークショップ、ということがあった。ワークショップは別料金で、事前の申し込みが必要。けど、当日でも頼めば、空き次第で入れてくれるかも。
Invited Adress 招待講演で。1人で講演する場合もあれば、50分枠ぐらいに複数が講演する場合も。日本だと招待講演はひとりのビックネームを呼んで特別な時間が用意されていたりするが、ここではそんなことはなく、一般の発表枠にまじって招待講演枠がいくつも点在している。
Film Program 映画のようなフィルムで伝えたいことを伝える、というセッション。字幕無しだから、ちょっとねえ‥。
Discussion 見に行った院生によると、比較的少数の参加者が円形に座り、ワーワーとすごい勢いでディスカッションが行われており、入るのには勇気がいりそうだとのこと。
Exercise これには驚いた。朝6:30〜7:30のセッションで、内容は要するに「運動」。日替わりで「海辺の散歩」「フラダンス」「太極拳」「ヨガ」といったメニューだった。「エアロビ」なんてのはなかった。アメリカ人は土着のものや東洋のものに関心が高いようだ。
Conversation Hour 例えば大学を出てしまった人(オーバーマスターやオーバードクター?)が語り合うための朝食会、なんていうメニューが。
Business 
Meeting
各Division(領域)の会議で、誰にでも公開されているそうだ。
Sosial Hour これもDivisionに関する時間。出なかったので様子が分からない。

以上はAPA主催のコマだが、これ以外にも各Divisionが独自に企画して開いているコマがある。
Hospitality 
Suite
学会期間中、各Divisionはそれぞれホテルの一室を借りていて、Divisionの仲間たちはそこを溜まり場として、空き時間に戻ってきてはくつろいでいる様子だ。Hospitality Suiteは、そのたまり場で行われる小規模の座談会等だ。家庭的な雰囲気で、お茶やお茶菓子も出される。英語のHospitaには、もてなすとか世話するという意味があるようだ。
英語がある程度できる人にはぜひお勧め。英語ができないけど度胸がある人にもお勧め。Hospitality Suiteの講師をするような人は、学会内で個人発表もしていたりするので、そちらに予め出て資料をもらったりすれば、話の内容がつかめるかもしれない。
Hospitality Suiteの詳細は後述する。







4 英語があまりできない人がAPAを聴く場合

 うーん。はっきり言ってSymposiumにしろ、Paper sessionにしろ、15分単位の発表時間ということもあり、早口で。聞き取りは極めて難しかった。
 国際学会は母国語でない人の英語が多いから、まだ分かり易いとは聞くが、APAはアメリカ人の学会なので‥。少なくとも、アメリカ人がそのへんで日常会話しゃべっているのが聞き取れないようだと、学会で英語を理解するのは無理だ、ということが分かった。留学した人何人かの話によると、留学してても講義が聞き取れるようになるには9〜10ヶ月はかかり、学会の質疑が聞き取れるようになるにはさらに日数がかかるものだということだ。
 でも、パワーポイントを使ってくれれば、今何を話しているかは分かるし、発表資料があれば、お土産になる。
 出た感じでは、パワーポイントかOHPを使ってくれる人が三分の一。パワーポイントは使わないけど配布資料がある人は三分の一弱。パワーポイントも無し、資料もなしでしゃべりたおす人が三分の一強。という感じ。(頼むからパワーポイント使ってくれ!資料プリーズ!)。特に、招待講演の人は、えらい人だからか、資料もパワーポイントも無しという確率が高かった(泣)。でも、ほんとに講演上手な人は、ゆっくりした英語とquietな雰囲気で、極めて感じよく話してくれて、詳しい内容は分からなかったけどスピリッツは伝わって来たりする。恐るべし。

 また、ポスターセッションなら、ポスターを読むことができるし、資料がもらえるので、日本人でもまあまあ理解できる。ポスターセッションに出まくるだけでも、APAに来る価値があったといえる。
 うっかりポスターの前に立ち止まって読んでいると、発表者から「Do you have any question?」と尋ねられちゃうので、資料をそそくさと取ってきてた私だが、同行の高木さん(ミネソタ大学修士2年)によると、「話しかけられたら、『これはどういう結果ですか?』と(すでにポスターに書いてあったとしても)質問して、相手が答えてくれたら、『This study is so impotant!』って言って別れればいいんですよ。」とのことだった。なるほど。






5 英語があまりできない人がAPAで発表する場合

 発表するネタさえあれば、発表の方が、人の発表を聴くよりも簡単かもしれない。アメリカ人だからプレゼンテーションの能力が高いのではないか、というのは思い込みで、用意した原稿をただ訥々と読み上げる人も少なくない。あと、形式的な特徴として、冒頭の「問題と目的」のあたりの分量が多くて魂を込めている。考察は普通の分量。けれど、日本人の私からみたら肝心の部分、「結果」の生データがろくに出てなかったり、あってもほんのちょっとの調査しか実はしていない、というような研究がけっこうある。こっちからすると物足りないが、これも文化の差なのだろう。
 よって、もし共同発表者に英語の質疑応答ができる人が居さえすれば、発表は可能だ。仲間に英語のできる人がいない場合、以下のような奥の手もあり得るだろう。
○ 仲間を募ってシンポジウムの枠で発表し、皆で時間ぎりぎりいっぱいまで発表を続け「質疑の時間がありませんでしたねー」と終わる。(というか、狙ったわけではないだろうがこういう終わり方をしてフロアとの議論が無いシンポジウムが多数あり。)
○ ポスターセッションでエントリーし、当日自分は学会に来ずに代理人を派遣してポスターを貼ってもらう。代理人は「I’m sorry、I’m just ’baby sitting’.Please write your name,then here.He(She)'ll send mail to you.」とやる。
これで英語の業績が‥(笑)。






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