(一社)日本機械学会 ロボティクス・メカトロニクス部門主催 九州地区競技会

フューチャードリーム!ロボメカ・デザインコンペ2023

■審査員


■総評

審査委員長 筬島 修三(一般社団法人九州経済連合会 産業振興部長)
 今回は「高齢化問題」はじめ将来の課題解決に対してどうする、客観的に見れば厳しい時代ともいえるのに、それに対し心根の「優しい」皆さんがソリューションを考えたプレゼンだったと思いました。
 全体通して大差がつくものではなく接戦ながら、でも順位は審査委員の皆さんのほぼ審査通りだったという大会でした。

<まとらぼ(福岡大学):廃用症候群予防電動リクライニング車椅子「C-PARL」>
 「廃用症候群」という初めて聞く病気の予防につながる電動リクライニング車椅子の提案でした。 プレゼンではモックアップ、データの分析・検証がすばらしく、かなり実現性の高いアイデアではないかと思わせるものでした。 例年の柔らかめのプレゼンではなく、違う角度で攻めてきた感もあり、高い評価を得たと思います。

<HY(宮崎大学):ボール収集/運搬ロボット「CAT」>
 たった一人での参加で障がい者スポーツと地元宮崎のまちづくりに貢献したいという、プレゼンでした。 パラスポーツを活性化させるため、我々ではなかなか気づかない障壁を、ある程度軽減できるかわいいロボットで、シンプルながら好感の持てるアイデアだと思いました。 宮崎の地域にも合致した、着眼点のよい提案でした。

<下剋上(福岡大学):はこぶね君>
 高齢化社会を見据えた、免許なしで誰でも運転できる「移動用小型車」の提案でした。 昨今は災害(特に水害)も多く、そういった悪路にも対応できる乗り物とのこと。 着眼点はよかったのですが、少し欲張りすぎて機能を求めすぎた感がありました。 強みを絞って提案した方がよかったのではないかと思いました。

<マウンテンズ(久留米工業高等専門学校):Hakon-dy>
 コロナの落ち着きと同時に、インバウンド含む観光客の増加によるオーバーツーリズムは大きな問題になりつつありますが、ここに着目して、過密を避ける誘導によって、適切な人の流れの形成を図ると同時に、ごみ・荷物の問題も解決しようとするものでした。 面白いアイデアと思いましたが、少し準備が足りなかったのか、実現性への道筋が見えなかったところが残念でした。

<10^eA(日本文理大学):iNakaの象徴モニュメントロボ「CanTree」>
 過疎地域の活性化につながるアイデアでした。ドローンを活用した支出削減、収入拡大方策を提案するプレゼンで、興味深いものでした。 住民からの生ごみをドローンで回収し、餌として獣害を起こす獣の誘導に使い、さらに特産品へと進化させるなど、ユニークな発想でよかったと思います。 オンラインツーリズムもアイデアの一つにありましたが、ここもあまり欲張らずに、目的を絞った方が更にいいものになったのではないかと思いました。

<東郷(近畿大学): 「TOGO」>
 介護の現場で必要とされるであろうアイデアで、トイレと車椅子を統合した、利用者・介護者双方の身体的、精神的負担を軽減することを目的にしたロボットの提案でした。
 切実な課題を解決すべく考えられたもので、思いはすばらしい、あとはもう少し実現可能性を高めてもらえればよかったのかなと思いました。


審査委員 田中 久生(福岡市科学館 サイエンスコミュニケーター)
 今年のコンペでは、テーマに対して課題を考え、その課題の要因や背景分析、その根拠となるデータの調査など、課題の設定理由が年々しっかりとしてきていると思います。 それらをもとに、様々な課題を解決するためにロボットを考え、提案されており、実現まで見据えたしっかりとしたプレゼンテーションを感じました。
 しかしながら、解決できるロボットを考えるだけでなく、『夢』を語ってもいいと思います。もちろん、実現できるレベルのロボットを考えることは基本ですが、そのうえで、ロボットによってもたらされる社会の『夢』やロボットに詰め込みたい機能をゆくゆくはなど想定の形でもよいので『夢』を見てもいいのではないでしょうか。
 『現実』と『夢』。どちらかだけでも足りず、両方をバランスよく考え、提案できることが、この『フューチャードリーム!ロボメカデザインコンペ』の素晴らしいところだと考えています。 これからも、いろいろな夢を持ったロボットや提案を楽しみにしています。

<まとらぼ(福岡大学):廃用症候群予防電動リクライニング車椅子「C-PARL」>
 現状分析と課題設定、その課題を解決するための必要な項目をしっかりと調査・考察されていると感じました。 また、細かな実験とその結果の考察がプレゼンテーションされており、問題を解決したいという『夢』にむかって、しっかりと解決できるロボットを考えて、実現に向けて考えていると思える発表でした。
 ただ、廃用症候群などの説明が、初めて聞く参加者もいるという考えのもと、もう少しわかりやすい説明だったらよかったのではと感じました。

<HY(宮崎大学):ボール収集/運搬ロボット「CAT」>
 地域の政策やイベントについて調査したうえで、地域貢献も考えられていたと思います。また、デモ機の映像などもあり、プレゼンテーションに説得力がありました。
 想定されている操作方法で、タブレットやコントローラーなどもいいですが、ステックなどあまり複雑でない方法も必要ではと思いました。

<下剋上(福岡大学):はこぶね君>
 高齢社会をテーマに、交通網の衰退などすでに影響が出始めている課題を分析し、解決するためのアイデアで、最高速や大きさの条件の調査や浮力計算などもされているプレゼンテーションでした。
 また、審査員の質問に対して、すぐに解決策を考えるとともに発表が終わっても考察する姿は、大変素晴らしく、問題を解決したいという想いを感じました。
 今後は、乗り降りなどの実際に使用している場面を今以上に詳しく考察していくと、実現に向けたアイデアになっていくと思います。

<マウンテンズ(久留米工業高等専門学校):Hakon-dy>
 混雑の状況から、即座にルートを設定し案内するアイデアや、段差の解決方法まで考察されているところが素晴らしく感じました。
 ただ、コロナ前のデータではなく、アフターコロナの情報やロボットの活動時間や速度など、実際に稼働させた場合の想定がもう少しあると、より説得力を感じることができると思います。
 また、このように身近に感じる観光客対策のロボットであるならば、そのロボット自体が観光目的になっても良いのではと思います。

<10^eA(日本文理大学):iNakaの象徴モニュメントロボ「CanTree」>
 自ら設定した課題に対して解決の方法がしっかりと提案されていたと思います。また、実現したときの大きさ設置場所、機能についてしっかりとしたプレゼンテーションでした。そして、音だけでなく振動も用いてリアリティを伝えようとするアイデアは素晴らしいと感じました。
 だた、遠目からの設置予想図があるとモニュメントとしての意味合いが伝わりやすかったかもしれません。
 また、モニュメントでありながら、人がなかなか立ち入れない場所への設置が想定されているところや、生ごみの回収方法の具体性や生ごみが入っていた袋の処理方法なども想定されていると、さらに実現した姿が想像できたのではと思います。

<東郷(近畿大学): 「TOGO」>
 ロボットが実現できた時の動きなどを、スライドのなかでアニメーションを用いながら説明があり、説得力のあるプレゼンテーションでした。
 ただ、ベルトコンベヤのようなベッドではなく、日ごろ使っているシーツやマットレスがある状態からの移動方法がどうなるのかが気になりました。


審査委員 加藤 優(元自動車会社デザイナー)
 今回は、少し先の未来ではなく現在の身近な問題・課題をテーマとし、かつ機能性・実用性の検証、及び実現性に向けての機械工学的に着実な解析を行なった提案が目立ったように思います。皆さんが正しい解を求めるために真面目に取り組まれたことが良く理解できる提案ばかりでした。
 ただ同時に、提案されたデザインや一部の学生の方と話をして元カーデザイナーとして感じられたのは、やはりデザインというのはなかなか理解されていないようだなという少し残念な思いでした。芸術学部などでプロダクトデザインを学ばないと難しいでしょうから、今回はそのような学生の参画がなかったからかも知れません。
 デザインとは単なる形(スタイリング)や色を考えることなどではありません。最も重要なのはそれを使う人や周りの人・環境との関係性を考えて、その製品は「魅力的か?(所有したくなるか?、使ってみたくなるか?)」「実際に使いやすいか?」「使ってどんな気持ちになるか?」などなど人の側・感情の側面からのアプローチも重視しながら「人とモノとの最善の関係性」を見つけてゆく事なのです。
 独創的な掃除機や扇風機などの製品で有名なD社の創始者は、単に形だけ格好良いデザインは中身の無い「殻のデザイン」だと言っています。D社では「よく機能する製品は美しい=機能主義」の考えに基づいて製品開発を行なっていますが、特徴的なのはスタイリングのためだけのデザイナーなどは居なくて、デザインエンジニアと呼ばれる人々が設計・試作からデザインまでを担っている事です。
 もちろん製品側からの視点の「上手く機能すること」が第一義ですが、同時に使う人側 からの視点の「使いやすいか」「見栄えは良いか」「所有する事に満足するか」などの観点においても(デザイン)エンジニアが検討して設計し、創造して(スタイリングも含めた)デザインにするのです。
 (私のような)デザイナーに設計は出来ません。でも皆さんのようなエンジニアはデザインエンジニアになれます。皆さんの今回の提案にさらに使う人、周りの人の視点からの考慮・検討がもっとあったなら、もっと素晴らしいものになると断言できます。来年はデザインエンジニアを目指してさらに頑張ってみましょう。

<まとらぼ(福岡大学):廃用症候群予防電動リクライニング車椅子「C-PARL」>
 近畿大学のテーマとも重なりますが、車椅子のリクライニングにおける人体と座面・背もたれとのズレを解消するリンク機構の解析が提案の主軸だったかと思います。 寝たきりや座りきりでの苦痛はなかなか健常者には想像が難しいのですが、ズレの数値化や、被験者10名によるアンケートなどを踏まえて、このような機構のリクライニング車椅子が目的とする廃用症候群の予防に役立つであろうことが良く理解できました。 さらに被介護者の心に寄り添うという観点から真珠貝をデザインモチーフとしたとあり、感情に対する考慮も大変良くなされていると思いました。 リンク機構を無駄なカバーなどせずに上手くデザインするのは大変に難しいと思いますが、競技用車椅子などを見るとパイプフレームだけでも格好良いものがあります。 またモダンデザインの椅子(マルセル・ブロイヤーのワシリーチェアなど)も参考になるので見てみて下さい。最優秀賞、おめでとうございます。

<HY(宮崎大学):ボール収集/運搬ロボット「CAT」>
 障害者スポーツでのボール回収をテーマとした、地味に思えましたがスポーツをする障害者にとっては大変に助かる良い提案でした。 ボールの回収メカニズムのアイデアを試作品を作製して種々のボールで実験して確認している点が大変良かったし、取り付け角度にも十分な検討がされたのではないかと想像します。 猫が戯れるようにボールを回収するというアイデアは楽しいですね。 ただしボールボックスの昇降は機構が良くわからず必要性も疑問です。 回収メカニズムでボールを跳ね上げるので、猫の背中に直にボールボックスを背負ったデザインの方が可動部も少なくデザインとしても可愛く、面白くなったのではないかと思います。 一人にもかかわらず資料やモデルも丁寧に作製されていました。優秀賞、おめでとうございます。

<下剋上(福岡大学):はこぶね君>
 デザインは格好良く、機能的なアイデアもたくさんで提案力がありました。 ただ位置が可変するクローラーなど実現性に疑問が湧くアイデアなど色々と盛り込みすぎとの感も受けました。 何より目的は高齢者の歩行困難への解決策でしたので、高齢者(足元がおぼつかない、杖も必要、眼も悪い、などなど)からの視点で考えると「どうやって乗り降りするの?」「運転・操作は出来る?」などの大変に重要な課題が残されていることに気がつくのではないかと思います(田中先生ご指摘のように)。

<マウンテンズ(久留米工業高等専門学校):Hakon-dy>
 オーバーツーリズムは京都だけではなく近年は他の中小の都市でも大きな問題になってきましたね。 提案は人の過密化を防ぐために流動的な人の流れを形成する支援を主な機能としたロボットでした。 私は質問で「観光客ひとりに1台だと過密が2倍になるのでは」と尋ねましたが、良く考えるとそうならないようにロボットが誘導するのですね。 申し訳ありませんでした。提案趣旨説明書など資料を見ると大変良く検討されているようです。 ただ、プレゼで大事なのは提案によって良くなった、そのイメージを皆に理解してもらうことです。 ある程度の人数の観光客がこのロボットによって手荷物も持たず、スムースにいかにも満足して観光を楽しんでいる様子をイメージとして提示されていたらなと思います。 アクチュエーターによる段差克服機能やゴミ圧縮機能の説明もありましたが、少し盛り込みすぎではないでしょうか。 観光客が実際にどのようにこのロボットと行動するかを考えると何が機能として重要かの順位付けが出来ると思います。 例えば太宰府だとどうだろうかと皆さんが何も知らない観光客になったとイメージしながら考え、開発することをやってみましょう。

<10^eA(日本文理大学):iNakaの象徴モニュメントロボ「CanTree」>
 アイデアが盛り沢山でした。過疎地域の収入創出が課題なのでオンラインツーリズムやジビエ特産品のアイデアが出るのは理解できますが、過疎地域での物品配送と生ゴミ回収、住民の見守りという過疎地域でのより重要な課題が提示されているので、それを解決するドローン及びその中継基地によるシステムを柱とした地域インフラの提案としてまとめた方が良かったと思います。 また回収した生ゴミを餌に加工し、そこを餌場とした獣の家畜化、また肥料も作成というのは壮大で大変面白いアイデアですが、もっと現実的で具体的なそのイメージまで提示されていたならばもっと良かったと思います。 住民側から見るとドローンはどのように生ゴミを回収するのでしょうか。 何か共通パレットのようなものが住民には提供されるのでしょうか。実際の状況をイメージしながら考えると解決してアイデアとして提示すべきものがまだあったのではないかと感じました。

<東郷(近畿大学): 「TOGO」>
 メンバーのお婆様の実体験からのテーマ設定と解決策提案でした。 大変優れているのはお婆様、看護師の生の声を開発に活かしている事=人側からのアプローチをしっかり行なっている事です。 寸劇でのお婆様のセリフは問題点を的確に表現していましたし、提案された車椅子型トイレロボットも、回転して胸のクッションとなる可動モニターなどさまざまな機能とアイデアが考えられていました。 さらにそれらが3Dモデルとアニメーションで大変解りやすくプレゼンテーションされていました。 ただ3Dモデルは動きの解析など工学的にはグレーの表現で十分でしたが、お婆様の情感に訴えるカラー(落ち着くカラー、逆に元気になるカラーなど)の提案があるとデザインとしてさらに良かったかなと惜しまれます。私の評価では1位と1点差の2位でした。


審査委員 永里 壮一(メカトラックス株式会社 代表取締役)
 皆さん興味深い内容で非常に楽しく審査をさせてもらい、私自身の勉強にもなりました。ありがとうございました。
 廃用症候群予防電動リクライニング車椅子「C-PARL」(チーム名:まとらぼ)は、理論的な解析なども実施され、これまでのロボメカデザインコンペの審査の中で最も実現可能性を感じさせるものでした。最優秀作品賞おめでとうございます。 他の作品も高い評価を得ていましたが、特にボール収集/運搬ロボット「CAT」(チーム名:HY)は地域に根差した具体的な内容でとても好印象でした。 また、メカトラックス賞のHakon-dy(チーム名:マウンテンズ)は、観光案内をすること自体で混雑緩和に繋がるというコンセプトがとても面白かったです。
 全般的に、いろんな役に立つ面白そうなアイデアを詰め込みすぎて、その結果、実現可能性や具体的な役に立つアイデアの説得力が低くなった印象があります。 中核となるコンセプトに自信をもって、そのコンセプトを軸に検討を重ねるとより良い作品やプレゼンになったのではと感じます。

 審査員として好き勝手なことを申しましたが、この経験を今後の学生生活や社会人生活に活用いただければ幸いです。 これからのご活躍、祈念しております。

<まとらぼ(福岡大学):廃用症候群予防電動リクライニング車椅子「C-PARL」>
・背景からテーマ設定までの流れが分かりやすい
・廃用症候群という用語を知り、勉強になった
・動き方の理論的な解析なども実施され素晴らしいし、実機検証までやっていて素晴らしい
・ダブルミーニングなネーミングも良い

<HY(宮崎大学):ボール収集/運搬ロボット「CAT」>
・プレゼン資料が分かりやすく、デザインされていて良い
・障がい者スポーツが盛んな宮アならではの内容で素晴らしい
・障がい者スポーツの介護者、付き添い者のフォローという視点が具体的で良い
・ボールの回収機構が具体的で、対象となるボールの特徴も調べられていて良い
・実際に実験も実施していて、素晴らしい
・回収ボックスの上昇機構も実現されていて親切
・メカナムホイールの傷対策など、細かい点にも配慮されている
・しっぽや手など猫の意匠を機能に活用していて良い
・ロボットの操作は自動化できるのでは?(リスクを低減させる方策を考えても良かったのでは)
・名称がダブルミーニングで良い

<下剋上(福岡大学):はこぶね君>
・高齢化から想起される課題(移動の問題)への説明がスムーズ、具体例も交えて良い
・道交法改正での移動用小型車の車両区分をターゲットにしたのはタイムリー
・はこぶね君のデザインがカッコよいし、機能的な印象
・オムニホイールとクローラーの併用は面白いが、ちょと機能を盛りすぎでは(水上走行は必要?)
・オムニホイールの機能説明は、実際のオムニホイールの動画などがあった方が良かった
・高齢者ターゲットだと、乗り降りが大変そうな。。。

<マウンテンズ(久留米工業高等専門学校):Hakon-dy>
・オーバーツーリズムの例は、もうちょと身近なところが良かったのでは?福岡県内にもありそう
・訪日外国人のグラフがコロナ前で切られてて恣意的(下がったのをコロナ禍が原因と説明するべき)
・かわいい意匠とのことだが、もうちょっとかわいくできるのでは(笑)
・歩きスマホ防止は良い機能
・能動的なルート案内のアイデアは面白い(スマホで混雑情報提供だけだと従わない人がいるかもなので)
・部分的な昇降機構のアイデアは面白い
・ファミレスのロボットを参考に経済性も検討していたのは素晴らしい
・とても興味深い内容でした、メカトラックス賞おめでとうございます!

<10^eA(日本文理大学):iNakaの象徴モニュメントロボ「CanTree」>
・ジェネレーションギャップとは思うが、チーム名が読めない(笑)
・支出過多による赤字?? 支出過多、収入創出 というワードがあまりなじみがない
・コンセプトの推移がちょとわかりづらい(iNaka、CanTree)
・オーバーツーリズムの具体例(湯布院)は具体的でわかりやすい
・プレゼンと並行した個別説明はやる気は理解できるけど、審査員は困惑します(笑)ポスター前で説明するべきでは

<東郷(近畿大学): 「TOGO」>
・寸劇仕立てのプレゼンは、具体的で面白い
・排泄にターゲットを絞っているのはテーマとして分かりやすいが、色々と機能盛りすぎかも
・機構のアニメションは分かりやすい
・体圧分散マットのアイデアは面白かった
・においにも配慮されているが、密閉だけで防げるのか?もう少し工夫が欲しかった


審査委員 田名部 徹朗(株式会社 三松 代表取締役)
 本コンペは、毎回高齢化から観光文化的な要素まで多岐にわたったテーマが取り上げられ、私の知らない九州各地の課題を教えていただいていますが、その中でも今回は、コロナ禍が明け、以前から提唱されながらなかなか解決がすすんでいないテーマにフォーカスされたチームが多かったと思います。 優劣を分けたところは何だったかと言いますと、テーマの分析・選定はもちろんのこと、ロボメカ開発にあたって大切な要素試験や検証も行ったうえで設計・デザインを行うこと。 それが実現性への近道であることをより訴えれたかどうかの差であったと思います。 このコンペを経験し体験されたことを通じて、参加された1人1人が今後社会に出てもきっと役に立つ手法を学べたことと思います。 今回の審査は各チームとも優劣つけがたく僅差での表彰は審査員泣かせのものとなってしまいましたが、また来年どこのチームに三松賞を授与できるか楽しみにしています。

<まとらぼ(福岡大学):廃用症候群予防電動リクライニング車椅子「C-PARL」>
 今回接戦を制し見事に最優秀賞を受賞されおめでとうございます。 三松社賞も同時にダブル受賞された今回一押しの研究であったと思います。
 まず、日常生活が不活性になりやすく、また病気などにより寝たきりとなる高齢者が様々な心身機能低下を起こすことを廃用症候群なる病気ということは全く知りませんでした。 動かないと1日3〜5%筋力が低下するほど急激な心身の衰えが精神的にもダメージを与えるという深刻さは自分自身の近未来な課題(笑)として興味をひきました。 しかも、車椅子に乗っていても床ずれになってしまうとは気の毒の一言です。 一般的には、使用時間の長いベッドをどうしようかとなるところを、介護現場でも実は使用頻度の高い車椅子に焦点を当てたことが何といっても一番のヒットと思いました。 また、その解決策を最先端の動力学計算理論であるマルチボディダイナミクスを使って解析し、高度な新機構を必要としない形で実装されようとしたことは実現可能性の高さを示すとともに開発コストの低減にもつながる画期的なアプローチであると思いました。 分析そのものも精緻で考え抜かれた実験より得たデータをもとに明快に行われており大変納得性の高い説明を受けることができました。 ぜひ実用化につなげていただきたいですし、その他さまざまな課題解決に適用できる分析・実用化手法を習得された立派な研究であったと思います。

<HY(宮崎大学):ボール収集/運搬ロボット「CAT」>
 準優勝おめでとうございます。 お一人でここまでの研究をされたことは本コンペでも初めての快挙であると思います。本当にお疲れさまでした。 まず、テーマ選定では高齢化社会への課題解決のために介護者に焦点をあてたこと。そして、宮崎で盛んな(まったく知りませんでした)障がい者スポーツでの課題解決に絞り、それを通じて宮崎自体の街おこしにまでつなげていこうという構想には頭が下がります。 課題分析と解決に必要な技術の抽出を行うにおいても、ボッチャをはじめとしたパラスポーツの様々な参加者の競技への関与フローを分析し、介護者だけでなく利用者にとっても快適なものは何かをきちんと見極めておられることからも、かなりの手間をかけた観察やヒアリングを実施されたことがうかがえました。 それを1人で行われたことには本当にびっくりしています。ぜひ地元宮崎のために実用化し、地域おこしにつなげていただればと思います。

<下剋上(福岡大学):はこぶね君>
 今回は伝統のパフォーマンスを削ってまでコンペに集中したことで更に注目させていただきました(笑)
 まず、テーマ選定としましては、今後ますます増えてくる高齢者の課題と規制緩和で生み出されたが普及につながっていない移動用小型車を組み合わせることで、双方の課題解決を両立させているという点でもいい着眼をされたと思います。
 また、すぐ導入できるバッテリー、クローラー等の技術は要素技術開発をあまり必要とせず本課題解決にすぐ適用できるということで実現性の高い発表となっていたと思います。 ただ、水中への対応など少し対応技術の領域を広げすぎアレもコレもとなってしまったために、逆に実現性を危惧する内容となってしまったことは否めず、課題解決の手段の選択をもっと絞ると良かったと思います。 最後に、来年はぜひ定番のパフォーマンスも行っていただき、優勝に花を添えるものとしていただければ嬉しいです。次回期待しています。

<マウンテンズ(久留米工業高等専門学校):Hakon-dy>
 コロナ禍が明けて、今はある意味インバウンド増に浮かれている日本国内に対し観光公害の危機を訴えたことはかなりインパクトのあるテーマ選定であると思いました。 ただ、ここまでは良かったのですが、調査を進めていく中であれもやりたいこれもやりたいという思いが強くあられたのか、いろいろな課題解決策を盛り込みすぎて実現性に乏しい研究成果となってしまったことが残念であったと思います。 Hakon-dyはゴミ箱まで付けてあげたために1人1人に持たせるには大きすぎたりといった点です。 また、詰め込みすぎたことが災いし、プレゼンテーションにおいても、背景説明、テーマ選定理由、課題抽出、アイデア・対策立案、検証分析作業などがなかなか聞く人たちに思いが伝わりにくかったことが残念でした。 ただ、観光公害は本当に他人事ではない問題です。これを提唱された勇気には敬意を表したいと思います。 ぜひもっと開発対象を絞ってブラッシュアップされればすぐ優勝できるテーマと思いますのでめげずにがんばっていただきたいと思います。

<10^eA(日本文理大学):iNakaの象徴モニュメントロボ「CanTree」>
 大分の皆さんはいつも日本の縮図のようなテーマを提唱していただくので大変勉強させていただくことが多いです。 今回は、過疎と過疎ゆえのネガティブな問題を逆転の発想で解決し収益化につなげていこうという過疎の皆さんにとっては夢のようなお話を提唱された素晴らしい発表であったと思います。 まず過疎の皆さんの天敵である害獣の動態・問題を分析、それに対する課題解決として、駆除ではなく家畜化することで収益化につなげていこうという発想は非常に興味あるものです。 課題テーマを的確に定めたことで、ドローンの飛翔音を使った餌付けや食べ残しのエサのたい肥化など今すぐ活用できる技術のアイデアが生まれ、それらの組み合わせで新しいプロダクトを生み出していくというストーリー展開は非常にいい説明をされたと思います。 また、その裏付けとして収入・支出の分析・検討まで行われていたため、実現可能性を強く感じることができた研究発表であったと思います。 ただし、ドローンは使用されますがロボメカデザインという点では、建築構造物に近くなっており少しコンペのテーマからは外れていたのが僅差で優勝を逃された原因ではないかと思います。 しかし、このテーマと解決策の提唱そのものは日本の課題解決に大きな投げかけをされた有意義なものであったと思います。

<東郷(近畿大学): 「TOGO」>
 高齢者介護の問題は、今抱えている問題であり将来に至ってはもっと大変なことになってしまう世界的課題です。 その中で利用者と介護者の両面で一番困られているトイレの問題を取り上げた本チームの着眼はなかなかに素晴らしいと思います。 また、利用者(候補)へのヒアリングを通じてニーズをしっかりとくみ取ろうとした点は課題解決の上でとても重要ことを実践されていて好印象でした。 技術的には、体圧分散マットや対話型モニターの導入など様々なアイデアをアンケートから抽出し適用させようとしたところは良かったのですが、臭気の問題にたいする対策に不安感を感じるなどやはり実現性という点ではまだまだハードルが高いと思わざるをえなかった点が残念でした。 デザイン性という点でも試作を見る限り、なかなか高齢者や介護者の気持ちをくすぐるというよりは、壊れないかなという心配が先にでてしまっている不安定さはもっと検討の余地があったかと思います。 様々な調査を経てのテーマ選定は申し分ないものであり、課題そのものは非常に喫緊の選定を行われおり、ぜひ更なる深い検討を行っていたき実現性を高めていただけるとありがたいと思います。