■審査員総評
- 審査委員長 谷川 民生(国立研究開発法人産業技術総合研究所インダストリアルCPS研究センター 研究センター長(ロボメカ部門 部門長))
- 審査委員 加藤 優(九州産業大学芸術学部 非常勤講師)
- 審査委員 田中 久生(福岡市科学館 サイエンスコミュニケーター)
- 審査委員 筬島 修三(一般社団法人九州経済連合会 企画調査部長)
- 審査委員 永里 壮一(メカトラックス株式会社 代表取締役)
- 審査委員 田名部 徹朗(株式会社 三松 代表取締役)
●審査委員長 谷川 民生(国立研究開発法人産業技術総合研究所インダストリアルCPS研究センター 研究センター長(ロボメカ部門 部門長))
各チームのすべてが、事前の対象となる現場ニーズや背景をしっかり調査して提案されていることは非常に驚きでした。
研究を始めるうえで、説得力のある提案を行うためには、現場のニーズを調査し、シーズ技術ありきで提案を考えないことは、特に課題解決を目指すロボット研究では重要なことです。
その経験をしていることは、今回の提案の良否はあったとしても、今後の研究活動に大いに生かせると思います。
一方、ニーズを調査する際に、その時の作業工程に引っ張られないことも重要です。
人間での作業のやり方とロボットの効率の高いやり方は、必ずしも一致するわけではなく、一旦、自身の考え方を他方から見て否定して再検討するプロセスが良いアイデアを生むための重要なポイントです。
今回の良否はその点で差が出たのかと思っています。この活動からの経験を生かして、より良いロボットの提案を期待しています。
<Farm From Marine(九州産業大学):畑守りジョーズ君>
農業機械というと、主に種まきや収穫に対する機械化を対象とすることが多いですが、本提案は、日々の草刈り作業、獣害対策や農薬散布といったロボットの付加価値が大きく表れる部分を対象にしているところは高評価でした。
デザインとしても現実的な仕様を抑えつつ、親しみのあるデザインであり、バランス的に高評価となっています。
また、モックアップの完成度が高いことも高評価につながったと思います。
<Tree(日本文理大学,九州工業大学,千葉工業大学):おーびっとくん>
複数の大学の仲間で提案している連携提案であり、デザインの多様性を求めるには、参加者の多様性も重要です。
森林観測という点では、ドローンによる観測方法もあり、若干、自身の研究しているロボットに引っ張られてしまった感があると思いました。
新しいデザインを考えるときこそ、一旦、自身の研究を否定してから考えることが重要です。
木を音で計測するというアイデアは興味深く、研究としても面白い課題だと思いました。
<Team 近大(近畿大学):ジェリイット>
水産業への対象として、興味深い提案であったことは評価できました。
通常の水中ロボットでのスクリュー型の移動形態ではなく、魚型としたデザインとしたことは、現実性はともかく、定置網漁業として魚を網の中に刺激せずに導く機能としては、説得力は高いと思います。
ただ、提案者本人がそれを意識していなかったようで残念でした。
現場でのニーズ調査がしっかりできていることは高評価です。
あとは、技術的な現実性とアイデアのバランスを詰めて、リアリティを示すと、より良い提案になったと思います。
<15度目の挑戦(福岡大学):リモート理髪ロボットASURA>
遠隔で理髪をするという対象においては、現在のコロナ禍の状況では、タイムリーな提案であったといえます。
残念だったのは、人手の作業をそのまま遠隔で行うだけの仕組みになっており、遠隔における安全性(ハサミを扱うという危険性)等を、どうのように解決するかといったデザインの提案があると良かったと思います。
人による散髪作業にアイデアが引っ張られると、斬新なアイデアが出ないので、切るという機能(ハサミだけではない)から考えてみることが重要だと思います。
<South Mountain(久留米工業高等専門学校):銀杏回収ロボット銀太郎>
銀杏回収といった、結構使えるところはありそうで、あまり考えられてなかった対象に目を付けたのは評価できました。
銀杏を単に邪魔者ように回収してしまうだけというのが残念でした。
銀杏は、売り物にもなるので、ぜひ、銀杏回収をビジネスにつなげる提案まで検討してほしかったと思います。
ロボット機構の中で、回収だけでなく、外皮をとるところまで機械化し、売れる状況まで銀杏を加工できると有用性が高まると思いました。
特に、ゾウの鼻のように一個づつ回収するからこそ、加工もしやすいというアイデアがあるとデザインと要求仕様のつながりが出てくる提案になったと思います。
モックアップは非常に完成度が高いモデルでした。
<世界をキュウシュウするけん(九州産業大学):NAIZEN>
観光という、コロナ禍で多くの影響が受けている対象を取り上げたことは評価できます。
要求される機能の多くが、観光客がスマホといった情報デバイスを持っていれば事足りる機能が多く、なぜ移動機能をもつロボットでなければならないのかの議論が乏しかったようです。
多くの研究者にも陥るところですが、ロボットありきで考えてしまうと、どうしてもアイデアに無理が出てしまいます。
いったんロボットを否定して、そこからロボットの価値を再評価する作業が重要だと思います。
<アズーマー完全体(大分大学):A.Pトリマー>
川の中の水草の除去という、一風変わった対象を提案していることは独自性が高いと思いました。
また、水草の除去は人の作業においては、かなり大変な作業であり、ロボット化の効果が高いといえます。
主に、移動機構と、水草回収機構のデザインを中心に提案していましたが、水草を抜くという機構に現実性が乏しかったのが残念でした。
人の作業方法にこだわらず、ロボットなりの抜き方の提案ができれば高評価だったと思います。
●審査委員 加藤 優(九州産業大学芸術学部 非常勤講師)
今回はコロナの影響で学内での作業、仲間とのコミュニケーション、或いはフィールドワークなどにもその活動に大きな制限があったであろう中で、一時選考を通過した七提案はどれも例年以上に内容の濃いものであったことに驚きました。
遠隔でのプレゼは皆さんも残念だったでしょうがスライド構成や発表の仕方など良く考えて練習されたのでしょう、提案内容はどれも良く理解する事が出来ました。
モデルの出来も構造まで再現するなど例年以上だったように思えます。
一点残念だったのは本コンペが工学系、デザイン系、社会科学系の学生のコラボレーションを標榜しながらデザイン系の学生の参加が見られなかった点です。
同じ学部学科の仲間同士で考えることは意見がまとまり易いと言ったメリットがある反面、考えが専攻の枠内に止まりがちです。
外形デザインのためだけではなく、ロボティクスやメカトロニクスのアイデアでの柔軟で斬新な発想のためにも社会科学系も含めた積極的なコラボチームでの活動を今後は期待したいところです。
<Farm From Marine(九州産業大学):畑守りジョーズ君>
私の住む田舎でも良く目にする光景ですが畑の周りをメッシュの鉄筋や電気柵で囲んだ景色は必要とはいえあまり美しくはありません。
補助センサーユニットに導かれたロボットが自動で害獣を撃退出来れば、柵の設置との費用対効果と比べてさらに景観も改善される優れた提案であると思います。
除草作業についてもナイロンコードタイプの採用、農薬散布機能の併用などアイデアの選択に際し色々考えたであろう事が伺われます。
モデルも大変良く出来ていて実際に機能するであろうと思わされるほどです。陸上の機械でありながらサメ型のデザインは並のデザイナーのセンスを超えて、確かに農家の人々にとって愛らしくて強力なサポート役に相応しいデザインとして説得力もあります。
最優秀賞おめでとうございました。
<Tree(日本文理大学,九州工業大学,千葉工業大学):おーびっとくん>
森林資源の把握とその管理を自動化するという目的のために、音を使った3次元空間計測による樹木地図情報(相対位置、移動経路)および樹木品質情報の取得、FuRoプラットフォームの採用、などの各専門分野について緻密に考えられた成果が集められた、まさに3校のコラボが大変良く機能した結果と言える提案だったと思います。
欲を言えばFuRoプラットフォームと合体したデザインに現場への人力による搬入作業がしやすい工夫(取っ手など)や日田杉のイメージ(?)などが考慮されていればさらに魅力的となったでしょう。
私の中では同率1位でした。
優秀賞おめでとうございます。
<Team 近大(近畿大学):ジェリイット>
3年前のロボメカコンペでもクラゲ駆除をテーマとした提案がありましたが、本提案は箱網内の漁獲量の把握とセットに適切でクラゲ被害を減少した網起こしを実現するというより幅広いテーマを設定した提案でしたね。
親機ブイ、子機ブイ、クラゲ検知センサー、魚数センサーなどのシステムは良く考えられたものだと思いました。
駆除ロボットは1m、100kgにもなるクラゲの大きさに比べて小さいのではと危惧したのですが、大きなものに取り付いて端からかじって粉砕してゆくというイメージであるならば案外うまく機能するかもしれないなと思いました。
<15度目の挑戦(福岡大学):リモート理髪ロボットASURA>
理髪に行けない人々、業務の機会が減った美容師の両方のニーズを取り入れた解決法の提案ですね。
カリスマ美容師と遠方の消費者を結びつける新たな需要の掘り起こしやビジネスとしても実用性や説得性があると思います。
ただ提案のモデルはこれから脳手術でも受けるのではないかと不安になるようなデザインではないでしょうか。
人の腕をそのままロボットアームに置き換えていますが、もっとスマートで小型化出来る機構があるはずです。
将来的には頭にかぶるようなポータブルな機構になれば家庭でカリスマ美容師にカットしてもらうことも可能な夢につながる提案でした。
<South Mountain(久留米工業高等専門学校):銀杏回収ロボット銀太郎>
銀杏の平均サイズ20mmに対して吸引口径26mm、吸引口は左右15cm平行移動、500個収容のタンク、悪路に対するクローラー装備、と銀杏回収という命題での幾つかの課題に対してそれぞれ真面目に解決し、それらを正直に組み合わせた非常に生真面目な提案だなと感じました。
これは全く正しいプロセスを踏んでいるのですが、さらに別の視点からの考察が加わると、「銀杏は結構まとまって落ちてるぞ」、「銀杏の葉っぱも一緒に落ちてるからノズルに引っかからないか?」などの解決すべき新たな疑問が浮かび上がるのではないでしょうか。
モデルは構造も正確に再現して良く出来ており一見してデザインされたようには見えませんが可愛らしく、確かにポップなデザインですね。
<世界をキュウシュウするけん(九州産業大学):NAIZEN>
福岡の観光振興、テレワーク、身障者や高齢者、通訳者の雇用促進、という現在の日本社会の情勢に相応しいテーマ設定だと思いました。
案内だけではなく荷物を置く機能など観光客の立場になって考えた事がわかります。
人間の顔を意識したデザインとのことで、安全性、移動性、地図表示、画面表示、荷物運搬などが考慮されていますが、例えば地図画面は(位置的に)見易いだろうか、また多くの人に心地良く受け入れられるデザインであるだろうか、などもう少し議論しても良かったと思います。
<アズーマー完全体(大分大学):A.Pトリマー>
水草の繁殖は最近のTVニュースでも取り上げられていましたが、人力での除去が大変で河川生物環境的にも景観的にも一般の関心が高いテーマだと思います。
文献調査等により課題と目標値を定めたプロセスは正しいのですが、課題解決のための機構の考案プロセスにおいて現場や現実といったものを良く考えてそれらが反映されたかという点においては少し疑問が残りました。
人が歩くこともままならないヘドロ化した水底、水中での密集した水草 、少しでも動くと混濁する水中環境、などを想像した上でアイデアを見直すとさらに良い提案に繋がったのではないかと惜しまれます。
●審査委員 田中 久生(福岡市科学館 サイエンスコミュニケーター)
今年はコロナの影響で様々な大会や活動が制限された年だと思います。
その制限の中で,参加した皆さんがテーマの「健康、教育、観光、地域産業の振興に貢献するテレオペレーション、テレロボティクスのための独創的ロボメカデザイン」に対し,チームで夢を描き,その夢を実現させるために様々なアイデアを考えられたと思います。
そのようなたくさんのアイデアや思いに刺激を受けることができる素晴らしい機会でした。ありがとうございます。
<Farm From Marine(九州産業大学):畑守りジョーズ君>
最優秀作品賞受賞おめでとうございます。
実体験から考えられた課題で説得力のあるプレゼンでした。
また,実現化をしっかりと想定されていたため,質問にも迷わず回答されていたのが印象的でした。
さらに,そのロボットのメリット・デメリット,運用方法もプレゼンされており,本当に実現したいという想いを感じました。
モックアップもしっかりと出来ており,プレゼンとあわせて素晴らしかったです。
<Tree(日本文理大学,九州工業大学,千葉工業大学):おーびっとくん>
多数の大学と連携するメリットを感じる内容でした。
移動用のfuRoプラットフォームについては稼働している映像がプレゼンされていたため非常に説得力を感じました。
また,問題に対する背景や解決のためのロボット,その技術についてもプレゼンされていたため,実現化へむけた想いをしっかりと感じました。
プラットフォームの移動速度や樹木測定に係る時間などの内容もプレゼンされていると,より説得力を感じたと思います。
<Team 近大(近畿大学):ジェリイット>
魚の形を模したロボットで非常にユニークでした。
また,漁業就職者数の減少を防ぐという目的に対し経済と作業の効率化から解決策を考えられていましたが,思い付きではなく数値を元に考察されていたと感じました。
通信方式まで考えていたのは,より深く実現化を想定していると思いました。
実際に処理したクラゲがどの程度の大きさになるかなどがプレゼンされているとより実現化に向けたものになると思います。
<15度目の挑戦(福岡大学):リモート理髪ロボットASURA>
コロナかおよぼした人の生活の変化をしっかりと調べており,説得力のある発表でした。
遠隔からの理髪は素晴らしいアイデアで,コロナに関係なく多くの場所で利用できるアイデアと思います。
また,実際に理髪を行うだけでなく,美容師の技術を専門学生も体験できるようにするアイデアなど,専門学校との連携で新たな収入源とする考えは素晴らしいと思います。
ただ,ハサミがむき出しなのは非常に恐怖感がありますので,別の方法を検討していただけると実現しやすくなるのではと思います。
<South Mountain(久留米工業高等専門学校):銀杏回収ロボット銀太郎>
かわいらしい外見のロボットでした。
街中で起こる問題に対しての提案で,私自身も身近に感じました。
実現化した際のロボットの金額を想定していたのは,実現化へ向けた大事な要素の1つだと思います。
ただ,銀杏を吸い込むだけでなく踏まれた際の地面の清掃等も同時にできるとより便利だと思いました。
<世界をキュウシュウするけん(九州産業大学):NAIZEN>
不気味の谷現象対策のためにあえてメカメカしいデザインにしているアイデアには,説得力を感じました。
また,安全性のために緩衝材を利用している点も好印象でした。
ただ,ボランティアの代わりというだけでなく,ボランティアとして人が活躍しているときにサポートできる機能等もあれば便利だと思いました。
<アズーマー完全体(大分大学):A.Pトリマー>
外来水草の繁殖問題に対し,根を除去するという解決策をしっかりと考え,そのためのロボットでした。
水草問題について考えさせられる良い機会になりました。
ただ,根をつかんで抜くという方法ですが,別の方法で実現させた方が簡単かもと思いました。
また,河川の透明度は高いだけではなく低いところもあるので,カメラ以外にも現場を確認する方法があればより現実化しやすいのではと考えました。
●審査委員 筬島 修三(一般社団法人九州経済連合会 企画調査部長)
コロナ禍での開催で、リモートでのプレゼンとなり、学生の皆さんも準備等大変だったと思います。
というか、日常自体もこれまでと全く変わってしまった学生生活になったことでしょう。
しかし、私は今回のプレゼンを見て、皆さんのピンチをチャンスに変える若い思考・エネルギーを感じました。
当日も言いましたが、私が審査に携わってきたこれまでの中で一番競り合った7チームでした。
最優秀チームだけではなく、すべてのチームが胸を張っていい大会だったともいます。
<Farm From Marine(九州産業大学):畑守りジョーズ君>
昼間・除草、夜間・害獣対策を一台で対応できるロボットで、まず視点がユニークだと思いました。
モックアップも細部まで作られており、完成度も高いものでした。
最優秀にふさわしかったと思います。おめでとうございました。
<Tree(日本文理大学,九州工業大学,千葉工業大学):おーびっとくん>
森林の観測・管理をドローン(空から)ではなく、地面から行い、大分県特有の濃霧時で視界が悪い時も音で「測る」というもの。
足回りもしっかりしており、完成度の高い提案だったと思います。
また3大学の連合チームで、それぞれの強みを活かして作り上げたロボではないでしょうか。
こういった連合チームがもっと増えていくことを期待しています。
<Team 近大(近畿大学):ジェリイット>
定置網漁業に着目し、漁業従事者の減少を食い止める→作業量の軽減化→大量発生するクラゲの駆除→ロボットで解決、というアイデアでした。
まず定置網漁業が自然にやさしいという事実は知りませんでした。
沿岸漁業が活性化すれば従事者も増え、地方創生にもつながると思います。
駆除するだけでなく、その際のデータも取り込んで置き、AIで発生予想(難しいでしょうが)にまでつなぐとなおよかったのではないでしょうか。
<15度目の挑戦(福岡大学):リモート理髪ロボットASURA>
毎度おなじみの福岡大学さん、チーム名もストレートにプレゼンの最後のパフォーマンスも楽しませてもらいました。
来るべき5G時代を見据え、リモートでのヘアーカットを提案されましたが、例えばカリスマ美容師が地方の顧客をカットすることもいいでしょうが、美容師自体の教育に使うこともありかなと思いました。
カリスマの動きデータをおぼえこませ、カリキュラム化するとか。
可能性は広がりそうなアイデアでした。
来年こそは!ですね。
<South Mountain(久留米工業高等専門学校):銀杏回収ロボット銀太郎>
かわいいデザインでモックアップもよく作られていました。
ただ、吸引部分をノズルではなく、もっと大量に吸い込む形の方がよかったのではないでしょうか?
ノズルだと時間もかかるし、吸引しなかった銀杏をこのロボ自体が踏んで悪臭の原因になるのではないかなと。
銀杏を捨てるのであればなおさら吸引効率を追求した方がよかったのではないでしょうか。
<世界をキュウシュウするけん(九州産業大学):NAIZEN>
あえてメカメカしいデザインの観光ガイドロボでしたが、個人的にはその必要性は低いのでは、もっとシンプルなデザインの方がよかったのではないかと思いました。
ただコロナがある程度収束し、インバウンドが回復しても、非接触の必要性は変わらないと思うので、リモートでの観光ガイドはニーズあるのではないでしょうか。
<アズーマー完全体(大分大学):A.Pトリマー>
外来水草が河川の環境に悪影響を与えていることは知りませんでした。
根こそぎ除去しないとまた繁殖してしまうので、根元から引き抜く作業が重要で、これに対応できるロボというプレゼンでした。
個人的には高評価のロボでしたが、一点だけ、アームの強度か作業効率あたりが明確に示されていれば、もっと上位に行けたのではないかと思いました。
●審査委員 永里 壮一(メカトラックス株式会社 代表取締役)
コロナ禍でアイデア出しや現地調査など苦労も多かったかと思いますが、例年以上にレベルの高い発表が多かったと思います。
特にモックアップとプレゼン資料が丁寧に作られているのがとても印象に残りました。
アイデアや技術がどんなに素晴らしくても、その素晴らしさを第三者に理解してもらえなければ物事の多くは進みません。
そういった意味で、今回の経験は制約条件下で他者に自分たちの想いをどう伝えるかチャレンジする良い機会になったのではないかと思います。
皆様の今後のご活躍を祈念しています。
<Farm From Marine(九州産業大学):畑守りジョーズ君>
・背景から目的、テーマ設定はわかりやすかった
・二つの機能を持たせて費用対効果を向上させていてよい
・プレゼン資料とモックアップが美しく分かりやすかった
・補助センサーユニットデバイスのコンセプトは良いが、もう少し説明が欲しかった
・安全性を考えてナイロンを使用している点は良かった
・農地のタイプに対応するのを完全自動化ではなく、人が介在する点も具体的で良かった
<Tree(日本文理大学,九州工業大学,千葉工業大学):おーびっとくん>
・複数大学のチームで素晴らしい
・背景から課題・目的へのアプローチが分かりやすかった
・fuRoに載せるのは、実現性の担保の点で素晴らしいが反則な気もする
(笑、とはいえ車輪の再発明しないのはとても良いこと)
・最短経路探索についての説明は分かりやすかった
・樹木計測の音響測距法の説明も良かったが、実験結果などもあればさらに良かった
・「山の在庫管理」のコピーはとても良い
(こういう分かりやすいワンフレーズはとても大事と思います)
・ドローンではなくクローラを使った理由の説明がもう少し欲しかった
(人の場合との比較データは良かった)
<Team 近大(近畿大学):ジェリイット>
・背景から目的、テーマ設定は適切
・クラゲの問題が、他の問題と比べてどれくらい深刻かの説明も欲しかった(経済性の観点など)
・クラゲ除去用シュレッダーの説明もあり良かった
・固定センサとロボット内のセンサの組み合わせで低消費電力運用できる点が良かった
・クラゲの生態学的習性も考慮されていてよかった
・魚数計測の仕組みも具体的で良かった
・超音波センサの有用性も検討済みで良かった
・ロボット本体の消費電力についてもう少し補足が欲しかった(ブイから有線給電はわかりますが)
・推進機構についての説明が欲しかった
<15度目の挑戦(福岡大学):リモート理髪ロボットASURA>
・テーマ設定は斬新で面白いが単に面白いだけでなくしっかり考えられている。
・コロナ禍だけでなく、原宿の美容院の手技を地方でも、などの展開もできそう
・安全性が心配。。刃物を使うので、補足説明が欲しかった
・研修モードのコンセプトは良かった(CG&感覚フィードバックとかも盛り込めそう)
・今年のパフォーマンスもサイコーです!
・メカトラックス賞おめでとうございます。講評の際にお伝えしましたがお世辞抜きで一番ビジネスに近い面白い提案と思いました。
残念賞と言わず(苦笑)、誇りに思ってください!
<South Mountain(久留米工業高等専門学校):銀杏回収ロボット銀太郎>
・背景から目的、テーマ設定は適切(具体的なイチョウ伐採の事例など分かりやすかった)
・回収した銀杏の活用まで踏み込んでほしかった
・掃除機と銀杏タンクへの貯留の仕組みが分かりにくかった(実際の掃除機で動作デモなどあれば良かった)
・具体的な構造のモックアップが作成されていてよかった
・システムの説明がもう少し欲しかった(なぜクラウドを使用したら効率的なのか)
・金額の根拠があれば尚良かった
<世界をキュウシュウするけん(九州産業大学):NAIZEN>
・背景から目的、テーマ設定が少しわかりにくかった(課題が多すぎ?)
・デザインの意図はわかった、緩衝材の説明は良かった
・案内ロボットとしては画面が小さいのでは
・費用面、コスト回収の話が欲しかった
・ネーミングの説明が欲しかった
<アズーマー完全体(大分大学):A.Pトリマー>
・テーマ選定がピンポイントかつ具体的で良かった(由布市の水草問題)
・とはいえ、コストも絡む話になるので他のエリアへの転用の話などもあれば尚良かった
・対象(オオセキショウモ)の生態や問題などの説明もあり具体的で良かった
・除去作業の問題点、特に根株についての説明⇒ロボットのポイントになる流れが良い
・とはいえ、後述のとおり具体的に根株に対してどうアプローチするかが欲しかった
・水流で回収のコンセプトは面白かった(水中ならでは)
・既存製品との比較が良かった(差別化の視点があったので)
・実現に向けた課題を挙げたのは良いが、課題解決についてもう少し説明が欲しかった
●審査委員 田名部 徹朗(株式会社 三松 代表取締役)
この本選発表会もそうですが、様々な制約があるコロナ禍にもかかわらず、いつもの年と比べてもハイレベルかつ入賞メンバーには甲乙つけがたいアイデアを提示していただき本当にありがとうございました。
そして、今回もまた九州ではまだまだ私自身も知らない事象があることを教えていただき感謝しております。
今年のコンペは、テレオペレーション、テレロボティクスというコロナ禍ならではの新しいテーマが掲げられたこともあり、最近多かった農業系から理容業、水産業、林業など幅広い分野に対して興味深いアイデアの応募がなされ大変面白かったです。
また、複数の学校同士の連携体がコロナに加え更に制約を受けていたであろう中で優秀な成績をおさめることができたのも、制約を受けても多様性が逆にイノベーションの萌芽を生む原動力となりえることを示唆したものとして将来への明るい期待を感じることができたコンペとなりました。
今回のコンペを通して得られた貴重な経験をぜひ今後の活動に生かしていただくことを期待するとともに、どんなテーマに来年三松賞を授与できるか楽しみにしています。
<Farm From Marine(九州産業大学):畑守りジョーズ君>
産業規模が大きい農業での課題ニーズを的確に捉え分析し、非常にいいテーマ選定をされたと思います。
また、実際のユーザーの立場にたって機能を考案し、それに必要な仕様選定もきめ細かく分析・検証が行われており、実現性の高いプランとなっていたことが今回最優秀賞に輝いたポイントだと思います。
ぜひ、皆さんの事業化の夢実現に向けてがんばってください。
<Tree(日本文理大学,九州工業大学,千葉工業大学):おーびっとくん>
三松賞受賞おめでとうございます。
チームメンバーが分散しているハンディを克服し、テーマ選定のための調査、きめ細かな分析、地道な技術検証をそれぞれの得意分野を活かして見事に解決策を提示した団結力と実行力が選定の理由です。
林業の衰退が叫ばれて久しい日本ですが、衰退の原因となったポイントを分析し、それを先端技術の力で儲かる事業となすことで林業と緑を生き返らせるプランは秀逸と思います。
ぜひ実現に向けて進めていただきたいと思っています。
<Team 近大(近畿大学):ジェリイット>
高齢化で衰退が進んでいる漁業復活は、やはり収入を安定させるこどが決め手であると見抜き、そのために漁獲の妨げとなっているクラゲ退治を手助けするアイデアはいい着眼と思います。
テーマ選定の確かさが、その後の開発ポイントの絞り込みにつながり、実用化が近い癒し系のジンベエザメをモデルにした除去ロボットや全体システムのプランニングにつながったものと思います。
<15度目の挑戦(福岡大学):リモート理髪ロボットASURA>
理容業界は飲食業と並び今回のコロナで痛手を被っている業界です。
そこで問題となっている接触を減らすためにリモートロボットを導入するのは当たり前すぎると思っていました。
ただし、カリスマ美容師のスマホを使ったマッチングアプリや彼らの技術をロボットに覚えさせて、それを美容学校の教材に活用していくなど事業化に持っていくためのアイデアには感心しました。
ロボメカデザイン的には、もっと改善改良の余地がありますが、一番大切なビジネスプラン(仕組み)でもっといいロボットを開発するための資金は捻出できると思います。
最後に、福大チームはパフォーマンスでは確かに毎年楽しませていただいていますが、もう少しコンペ課題の活動に時間を費やしていただければ優勝は勝手についてくるものと思います。
次回優勝に向けて精進してください。
<South Mountain(久留米工業高等専門学校):銀杏回収ロボット銀太郎>
個人的に好きな銀杏が実は公害を起こしていたとは、まったく意外な事実でした。
ただし、このテーマ解決のための回収ロボットのコンセプト設定は分析検討不足で、新しい技術を総花的に並べただけとなってしまったのかなというのが正直な感想です。
もっと利用者の立場から考察できていれば、より具体的で有効なシステムとして提案できたのではないかと悔やまれます。
<世界をキュウシュウするけん(九州産業大学):NAIZEN>
九州だけでも、こんなにたくさんのボランティアガイドさんがいたことに驚きました。
また、一番コロナで痛手を被っている人たちであることは間違いなく、これをリモートロボットで解決していこう考えたテーマ選定は良かったと思います。
ただし、投資効果の検証がないまま、かつ高齢ガイドさんに対する操作性の配慮不足や限定された用途でしか使えない等もっと分析・検証を経たうえでロボットのコンセプトを固めれば、より有意義な発表ができたと思います。
<アズーマー完全体(大分大学):A.Pトリマー>
大分県の河川でオオセキショウモなる外来水草が、これほどの環境破壊を助長していたとは全く知らなかった事実でした。
これをターゲットに定めたところまでは期待が膨らみましたが、その後の分析検証不足のため、ロボメカデザインの視点では機能性・デザイン性、そして技術的にカバーできていない点も多く、これらを更に煮詰めてぜひ実現に向けてプランを磨き上げていただきたいと思います。