(一社)日本機械学会 ロボティクス・メカトロニクス部門主催 九州地区競技会

フューチャードリーム!ロボメカ・デザインコンペ2018

◆2015年度 審査員総評

審査委員長 佐藤 昭則(九州産業大学 芸術学部 デザイン学科 講師)
審査委員 谷 哲哉(福岡市経済観光文化局 創業・立地推進部 新産業振興課 課長)
審査委員 水上 博文((公財)北九州産業学術推進機構 ロボット技術センター 事業化支援担当課長)
審査委員 筬島 修三((一社)九州経済連合会 産業振興部長)
審査委員 永里 壮一(メカトラックス株式会社 代表取締役)


審査委員長 佐藤 昭則(九州産業大学 芸術学部 デザイン学科 講師)
 「市域産業の支援,地方創生」という非常に現実的で重たいテーマ設定に対して,正面から向き合い,それぞれの目的を設定し解決を試みた提案に,将来へのロボット技術の可能性を感じることができました. また,問題をただ解決するだけでなく,楽しさや遊びの要素を盛り込んだ提案も多く,私たちも楽しく審査をさせていただきました. ものづくりは試行錯誤と失敗の中から生まれてくるものです. ぜひみなさんには今回提案したロボットの機構や技術を部分的でも良いですから自らの手で試作してみる事に挑戦してみて欲しいと思います.今回のこのコンペに取り組んだ経験が,今後のみなさんのものづくりの糧になる事を願っています.
<農家を助け隊 (久留米工業大学):YOUNG MAN>
 今すぐにでも実現できそうな身近なテーマへの現実的な解決提案だったと思います. 実現化された際の使い易さについてはまだ改良の余地がありそうですが,広く一般への普及?展開可能な点と製品化への可能性を秘めている点が高く評価されました. 欲を言えば,もう少し未来に向けた提案的な要素も盛り込まれていればさらに良かったのではないかと思います.
<働き漢蜂 (九州大学):『AMBEER』>
 養蜂業をロボットでサポートするアイデアについて,その背景と問題解決へのロジックは良く考えられたものでした. 実現すれば養蜂関係者すべてに対して有益な情報が蓄積され産業そのものが変っていくのではないか,という可能性を感じました. 情報を収集?管理して対策する車両については,提案されたデザインがベストなものかどうかという意見も審査員から多く聞かれました. 実際の養蜂の現場すべてで提案の車両が活動できるか,各種情報収集?対策機能を移動するロボットに載せるのか,といった事は,全体のシステムの中でもう少し整理する必要があるかもしれない,とも感じました.
<えふフォー (北九州市立大学):竹林保全ロボット 〜 Iai 〜>
 天然資源を活用した産業である竹の子を中心とした,里山の環境保全まで含めた提案は,ロボットの必要性を十分に感じさせるものでした. ロボットに装着するツールの取り替え(モードの切り替え)については,人が行うのではなく,ロボット自身が自立して判断と交換(選択)をするほうがよりロボットとして魅力的で導入する意味を感じるものになるのではないかと感じました.
<Bee捕る's (福岡大学):メカメレオン>
 かわいらしい?ペットの様なロボットは,作物栽培の現場で作業者を和ませるのではないかと思います. また,農業の現場だけでなく一般の家庭でも受け入れられ易いのではないかと感じます. 機能性だけでなく,人々の生活にとけ込みながら黙々と仕事をこなすロボットの姿は,これからの私たちがロボットと共存していく事へのヒントになるのではないかと感じるものでした. また,身体を張ってのプレゼンテーションは作品への意気込みが強く感じられる楽しいものでした.
<knct-drone (熊本高等専門学校):Burning Off Dead Grass Robot>
 野焼きの現場での危険な作業を肩代わりする,地元への思いが高く評価されました. ロボットの作業能力などを想定すると小型ドローンではなくある程度大型の無人ヘリコプターの様なものになるのではないかとの意見も聞かれました. 提案に至る背景やコンセプトについては十分その必要性が感じられます. 今後のロボット技術の進歩で可能となることが期待される提案だと感じました.
<九産大産業ロボット (九州産業大学):タケノコ掘り補助ロボット>
 たけのこ掘りの作業を支援する道具としての提案は控えめではありますが,あえて自動化して従事者の代わりをするのではなく,人を支援するということに徹した潔いまとめ方だと感じました. その一方で,スリム化,シンプル化され過ぎたことでロボットとしての先進性や可能性を感じられなくなったのが残念です. 竹の子を掘るツールとしてだけでなく,竹の子堀りに従事する人の山での作業全般にわたりロボット技術が活躍するような提案ももっと盛り込めるのではないかと感じました.
<コンペ1 (九州産業大学):TENTHIKAKUN 1号>
 ドローンの活用方法のひとつとしてその可能性を感じました. その一方でその状況を想像すると,多くの人がサービスとしてドローンにガイドされて移動することを想像すると自分の機体を見失ったり,機体を追いかけること自体が目的になってしまい,店舗への経済的効果につながるのかな?という心配も感じました. そのくらい実用性を感じさせる提案でした.目的とその効果を整理して説明できると,ドローンが人をガイドするというアイデアは今すぐにでも実現できそうな提案だと感じました.

審査委員 谷 哲哉(福岡市経済観光文化局 創業・立地推進部 新産業振興課 課長)
<農家を助け隊 (久留米工業大学):YOUNG MAN>
 先端技術を使わず,かなり実用的な提案になっている. 特に農家の高齢化の抱える問題に対する素晴らしい提案だった. もう少し形状に工夫があれば更に良いものになったと思う.
<働き漢蜂 (九州大学):AMBEER>
 農業のICTについて,養蜂をテーマとした面白い提案だった. ロボットそのものは若干,大げさな感じもするが,養蜂家のネットワーク化は素晴らしい内容だった.
<えふフォー (北九州市立大学):竹林保全ロボット 〜 Iai 〜>
 竹林の管理といった地域課題をよく捉えている. 全体的に実用的な形状の提案が多かった中で,見た目が分かりやすいロボットらしくてよかった.
<Bee捕る's (福岡大学):メカメレオン>
 ハチの駆除といった農業の課題解決を提案するもので,特にカメレオンの造形は面白い. 愛玩機能を追加して,家庭用にハエや蚊を駆除するバージョンがあってもよいと思う.
<knct-drone (熊本高等専門学校):Burning Off Dead Grass Robot>
 話題のドローンを農業に活用した面白い提案だったが,やや機能を盛り込みすぎだったように感じる.
<九産大産業ロボット (九州産業大学):タケノコ掘り補助ロボット>
 農家のニーズを取り入れた面白い提案だったが,ロボット的な要素が少なかった. 実現性を重視した提案であることは理解できるが,センサーやアクチュエータを入れて,ロボットらしい提案としてもよかったのではないか.

審査委員 水上 博文((公財)北九州産業学術推進機構 ロボット技術センター 事業化支援担当課長)
 今回発表されたユニークなロボットは,地域産業の支援に関するテーマから,ほぼ一次産業(農業や林業)で活躍するロボットばかりでした. 我々北九州の学研都市でも,九工大の社会ロボット具現化センターが中心となり,トマトロボット競技会など実施して,トマト農家のためのトマト収穫ロボット開発を進めています. つまり,一次産業で活躍するロボット開発は時代の要求と言えましょう.
 FAISでは,地場の大学,企業を対象に産学官連携による新しいロボットの開発を支援しています. 今回の発表の中で素晴らしい提案があれば, 開発テーマの候補としたいという観点からも見させて頂きました. その点では,北九州市の取組みでもある高齢化対策に繋がりそうな提案もあり,今後の参考にさせて頂きます.
 みなさんの発表につきましては,いずれも農業や林業対するニーズを的確に捉え,プレゼンも非常に分かりやすく,比較的実現性の高いテーマ多かったと思います. 将来,アイデアだけでなく一次産業を本当に助けられる実用的なロボットの提案を期待します. 今回のコンペを通して得られた貴重な経験を今後の活動に生かして下さい.

審査委員 筬島 修三((一社)九州経済連合会 産業振興部長)
 実用化に重点を置いた今回のコンペは,派手さはなかったですが,非常に興味深いアイデアばかりで個人的には楽しかったです. 課題を見つけ,実際に現場の声を聞き,課題解決策を提案するサイクルは大事なことであり,それをできている皆さんのアイデアに感銘を受けました. これからも頑張ってください.
<農家を助け隊 (久留米工業大学):YOUNG MAN>
 実用性・実現性が高評価でした. 農家のニーズもあると考えられますし,余分な機能などスリム化,低価格化を実現すれば商品としていけるのではないかとの印象を受けました.
<働き漢蜂 (九州大学):AMBEER>
 養蜂が九州でこんなに大きい産業とは知りませんでした. 着眼点がユニーク.解決策もアプリを活用したもので,IoTの切り口からも面白いアイデアだと思います. これもどこかメーカーなりと組めば実用化の可能性高いのではないかと感じました.
<えふフォー (北九州市立大学):竹林保全ロボット 〜 Iai 〜>
 竹林の整備という着眼点は大いに評価しました. デザインもロボットらしいもので良かったのですが,実現性の点で若干低評価としました. ただし,もっと改善・改良できるアイデアで,発展性はあると思います.
<Bee捕る's (福岡大学):メカメレオン>
 まずはパフォーマンスに驚きました. 中身も外来種のスズメバチの駆除という,地味だけど重要な問題を取り上げており,着眼点もよかったです. ただし,個人的にはカメレオンである理由・理屈が今一つ弱かったように思います. また模型もなぜ緑色でなかったのかも・・・そこにリアリティがあれば,デザインとしての評価も上がったのではないかと思います.
<knct-drone (熊本高等専門学校):Burning Off Dead Grass Robot>
 高齢化・人口減少で維持が困難になってきた阿蘇の野焼きに着眼したところは地方創生の点からも高評価でした. ドローンで省人化し,なおかつ臨場感ある映像などは観光資源に使えるのではないかとも思いました. まわりが大学生ばかりの中でよく頑張ってプレゼンしたと思います.
<九産大産業ロボット (九州産業大学):タケノコ掘り補助ロボット>
 地元名産のたけのこに目をつけ,実際に農家の方々にヒアリングした商品. 高機能とかロボットとかという範疇ではないかもしれないが,現場の生の声を聞いて,課題解決型の商品提案をしたことは高評価です.

審査委員 永里 壮一(メカトラックス株式会社 代表取締役)
 1次審査から全ての作品に目を通しましたが,ロボットという夢のある?!テーマ設定のため,多様な応募がありとても楽しく拝見させてもらいましたが,採点にもとても苦労しました(笑). 特に私はどうしてもビジネス視点がベースとなりますので「技術的に実現できるのか」,「製品化した場合,イニシャル/ランニングの面で採算が合うのか」,「話題になるか(ちゃんと知ってもらえるか)」といった点を中心に審査しました. 結果は結果として,こういったプロセスでアイデアから具体的なロボットのプランまで一通り体験することは非常に良い機会になったのではないかと思います. 欲を言えば,他の学部・学科,大学など異分野の人たちでチームを組んで技術・デザイン・ビジネス・社会性などの観点から幅広い視点でプランニングできると,より良い機会になると感じました. これらの点を踏まえ,来年度も是非トライして,メカトラックス賞狙ってください(笑).
<農家を助け隊 (久留米工業大学):YOUNG MAN>
 一見地味ですが(笑),具体的かつ真摯なプランでコスト面も試算してあり,とても共感がもてました. あまりにも具体的過ぎるので,個々の技術的課題に対して,本当に実現できるのか気になる点もありましたが,それは欲張りなのかもしれません(笑). 最優秀賞おめでとうございました!
<働き漢蜂 (九州大学):AMBEER>
 デザインやコンセプトが素晴らしい,特にプレゼンテーションの資料やプレゼンでの説明自体も良かったと思います. これまた欲張りですが,コスト面の試算や市場性の説明まであると,より良かったのではないかと思いました.
<えふフォー (北九州市立大学):竹林保全ロボット 〜 Iai 〜>
 工学的に実現可能なのか,またコストに見合うのか,この点がとても気になってしまいました. 狙いや意図は素晴らしいので,それをどう現実的なソリューションに落とし込むのか,具体的には双腕のロボットであることが正しい選択なのか,そういった点を説明して欲しかったです.
<Bee捕る's (福岡大学):メカメレオン>
 なによりプレゼンが最高でした!!工学的にカメレオン型であることの意義?!の説明があったらより良かったと思います.
<knct-drone (熊本高等専門学校):Burning Off Dead Grass Robot>
 ドローンの企画は今回多かったですが,用途が具体的でわかりやすかったです. ペイロードや滞空時間などスペック的なモノは既存の機体とのアナロジーで簡単に出せると思いますので,それらをベースにもう少し具体的な説明があったほうが良かったと思います. あとは,着火だけでなく海外での山火事の初期消火など,違う用途の検討も面白いのではと感じました.
<九産大産業ロボット (九州産業大学):タケノコ掘り補助ロボット>
 フィールド(現場)で具体的にヒアリングしていることが素晴らしかったです. また,完全に自動化させず,「人を補助するロボット」というコンセプトが具体的で,さらに草刈り機とのアナロジーでデザインや操作法などをまとめているところも好感が持てました. ただ,残念ながらロボット要素が少ない.. 竹の子のセンシング(検知)の部分がもう少し具体的に説明してもらえると良かったと思います.
<コンペ1 (九州産業大学):TENTHIKAKUN 1号>
 正直,一般的な採点結果はイマイチでしたが(笑),このまま埋もれさせるのはもったいないと,独断と偏見でメカトラックス賞とさせていただきました. 天神地下街でドローンが人を案内する,実現できたらインパクトは絶大と思います. また地下街という限定された稼動環境であれば,天候や電波状況などの外乱に対しても対処しやすく,実現可能性も高いのではないかと感じました. 安全性など検討すべき点はありますが,軽量化・ネットで囲むなど方法はあるような気がします. 適度な未来感と実現可能性,とても大事と思います.