(一社)日本機械学会 ロボティクス・メカトロニクス部門主催 九州地区競技会

フューチャードリーム!ロボメカ・デザインコンペ2018

◆2014年度 審査員総評

審査委員長 佐藤 昭則(九州産業大学芸術学部デザイン学科講師)
 各界でご活躍の審査員の方々とともにプロダクトデザインとしての視点から審査に参加させていただきました。「宇宙生活」という、普段の私たちの生活とは違う、想像がつきにくいテーマ設定であったと思いますが、宇宙空間での生活で問題とされている事に対して真剣にそして楽しみながら解決策を見つけ出すその姿勢に感心させられました。寄せられた作品はどれもすばらしいもので審査では頭を悩ませました。
 宇宙での生活も現実のものとなってきています。一般の人も宇宙への旅行が可能になりつつあります。そのような状況の下、宇宙ステーションで長期にわたり生活することを想像すると、日々わたしたちが行っている生活行動が無重力という特殊な空間でどのように営まれるのか想像してみる事から新たな機器の開発につながりそうな気がしました。また、宇宙という無重力の環境であるからこそ実現可能な機構や物の形もあるのではないかと思いました。審査でご一緒させていただいたJAXAの松村先生とのお話の中で宇宙空間における現在の生活の状況にはプロダクトデザイナーが介在する余地がまだまだあると強く感じました。
 モノはデザイナーがいなくても機構は成立しますし使用に耐える物は出来上がります。しかしそこにデザイナーが介入する事でモノに感性的な魅力を与えより愛着を持って使える物になると信じています。皆さんも日ごろから「欲しい」「魅力的だ」と感じる気持ちを大切にして「なぜそれが良いと思うのか」を意識してその気持ちを分析してみてください。その繰り返しで魅力的な物を嗅ぎ分ける感覚が磨かれると思います。今回の皆さんの作品の着目点はどれもすばらしいものでした。それを魅力的な形に魅せようとする多少の意気込みの差が結果に表れたのではないかと感じています。今後の皆さまのご活躍を大いに期待しています。

審査委員 谷 哲哉(福岡市経済観光文化局新産業・立地推進部新産業振興課課長)
 宇宙における宇宙飛行士の生活や活動を支援するためのユニークなアイデアが提案され,入念な準備による各校のプレゼンテーションやモックアップによる説明など,学生の皆さんの熱い気持ちを感じながら,楽しく審査させていただきました。
 どれもユニークな提案でしたが,宇宙での生活に限らず,通常生活の中でも役立ちそうなものも数多く見られ,特に健康,介護などの福祉分野での活用も考えられるアイデアは素晴らしく,次回以降もいっそう素晴らしい提案となると感じました。
 皆さんのアイデアが,新たなビジネスや製品,サービスとして福岡から発信され,日本の元気につながっていくことを期待します。

審査委員 松ア 一成((公財)北九州産業学術推進機構産学連携統括センター 事業化支援担当課長)
 私が所属するFAISでは,地場の大学,企業を対象に産学官連携による新しいロボットの開発を支援しており,今回の発表の中で素晴らしい提案があれば,開発テーマの候補としたいという観点からも見させて頂きました。その点では,宇宙環境のみならず高齢化対策に繋がりそうな提案もあり,今後,テーマ化へ向けた検討を進めていきたいと思っております。
 みなさんのご発表につきましては,いずれも宇宙における宇宙飛行士の生活や活動に対するニーズを的確に捉え,また,モックアップを活用することで,非常に分かりやすいものであった半面,アイデア,実現性(適用する技術)などすべての評価基準を満足するチームはほとんど見当たりませんでした。これはメカ設計とデザイン設計のコラボレーションが実施できるチーム構成になっていなかったのが原因では?と推察します。将来,実現可能になるような素晴らしい提案を目標に是非,今回の反省点を研究室の後輩や関係者の方々に伝えていって欲しいと思います。
 みなさん,今回のコンペを通して貴重な経験をされたことでしょう。今後のご活躍を期待します。

審査委員 松村 祐介(宇宙航空研究開発機構有人宇宙ミッション本部有人宇宙技術センター 技術領域リーダ)
 本コンペ参加者は、工学系と芸術系の学生の混成チームと伺っており、モックアップ等を駆使したプレゼン力の高さと提案内容のデザイン性に感銘を受けました。通常宇宙機器は一般消費者向けでなく、宇宙飛行士による操作性、保全性は考慮しますが、デザイン性はあまり考慮されません。また、空力を考慮する必要がないためか、私個人は機能美に欠けるものと思っていました。その中で、強くデザイン性を意識した提案は刺激的であり、今後、宇宙の敷居を下げ、いわゆる宇宙業界以外のメーカやユーザーの参入を促すためには、そのような視点も重要であると改めて感じた次第です。但し、設計の観点では、多少物足りなさが残りました。機器設計において、水リークへの対応や再生利用の重要性については強く認識されていたようですが、それ以外への配慮や、そもそも提案機器がどのように動作するのかといった点について、もう少しだけ深く詰められると、より技術的実現性及び実用性の高い提案になるものと考えます。有人宇宙システムでの機器設計に係る環境条件等について、我々の情報公開不足を反省するとともに、今後も、様々なご提案を頂ければと思います。また、コンペに留まらず、このようなご提案から、今後、さらに具体化に向けて進めることができればと期待しています。

審査委員 筬島 修三((一社)九州経済連合会 産業第二部長)
 今回初めて、審査員として参加させていただきました。宇宙ステーション内における宇宙飛行士の活動を支援するというミッションを実現すべく、様々な、そして斬新なアイデアがプレゼンされ、個人的には非常に楽しい審査でした。
 また宇宙での活動支援ということだけではなく、今後日本が直面する高齢化社会へのソリューションにもなりそうなアイデアもあり、各チーム、各参加者の可能性を非常に感じました。
 来年もまた、審査員をうならせる、課題解決型のすばらしいアイデアが出てくることを期待してます。