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  • 九芸特別インタビュー ファッションもインテリアも人と関わる「空間」だ。

九芸特別インタビュー

  • 社会に出たとき、大きな財産となる「リサーチブック」

  • 空間とは、空(から)であり、間(あいだ)であるところ。一般的には「物体が存在しないところ」です。しかし、その空間をつくり出すモノの大きさや配置を考え、新たな空(から)や間(あいだ)をつくることができます。

    空間演出デザイン専攻では、人間が存在し、人間が関わる場が「空間」であると定義しています。だから、デザインの出発点は人間のカラダになります。カラダにいちばん近い空間を「身体空間」と捉えているので「ファッションデザイン」が人がふれる最初の空間演出になります。 次に近いカラダがふれる空間が「室内空間」です。店舗デザインをはじめとする商業空間や住宅のリフォームも含めた住空間の「インテリアデザイン」が対象となります。

    さらに、その室内空間をつくり出す「建築のデザイン」、建築が存在する空間として「環境デザイン」と広がっていきます。それぞれの空間(場)を演出することも大切な学びなので、舞台美術やディスプレイデザイン、照明計画の授業もあります。 また、人間が関わる場、すべてがデザインの対象なので、そこで過ごす「時間」もデザインすることになります。

小林 さくら「カクカクいたいた」 (「JID AWARD 2015」NEXTAGE部門「部門賞」/JID九「第10回学生インテリアデザインコンテスト」最優秀賞 *JID:公益社団法人日本インテリアデザイナー協会

松井 由貴「日本のリビング空間に着目した家具の提案」(空デ専攻の優秀賞/JID九州 「第10回学生インテリアデザインコンテスト」奨励賞)*JID:公益社団法人日本インテリアデザイナー協会

  • 社会に出たとき、大きな財産となる「リサーチブック」

  • 本専攻の核となる授業が「空間演出デザイン演習」です。出題された課題に対して作品をつくり、一人ひとりがプレゼンテーションを行います。ここで、とても大切なのが、本専攻の特徴的な教育スタイルである「リサーチブック」の制作です。

    例えば「お店のデザイン」が課題とすれば、計画地周辺の環境調査、どんな人たちが行き来しているのか?住宅地なのか?オフィス街なのか?などデザインを導くために、事例調査を含めさまざまな角度からリサーチを行い、図や写真、文章などで、デザインへ至るまでのプロセスをスケッチブックにまとめていきます。

    ちょっと大変だったりするかもしれません。でも、しっかりとリサーチを積み重ねたプロセス(デザインに至るストーリー)からデザインを考えることを身につければ、社会に出てからデザイナーとして一生の財産になるはずです。

  • 人物
  • 建築都市工学部の住居・インテリア学科との違いは?

  • 建築都市工学部は、自然科学や数学を基礎にした工学が大元にあると思います。本専攻で空間のデザインを学ぶ際にも構造を理解する必要はありますが、数学スタートではなく模型や実物の制作を通して感覚的に力学を理解し、構造を学ぶことに主眼を置いています。実際の現場では、構造の専門家と一緒に仕事をすることになります。ただし、小規模な建築の設計をしたい学生に対応するため、二級建築士の受験資格が得られるようになっています。

  • どんな人に向いているの?

  • 本専攻が芸術学部の中にあるということは、根っこに「美学」を持つということです。デザインは、その過程で論理的に考えることが求められますが、「色はこれだ」とか最後にデザインを決定するときはデザイナーの感性に委ねられます。理屈を超えて「これがいちばんカッコいいです!」と自分自身の感性を信じて言いきれるか。美学が大事になってきます。

    それを磨くためには、生活の中で目にするもの、耳にするもの、手にふれるもの、すべてに興味を持ち、感動する人であった方がいいんです。たとえば、自分は山登りをしなくても、山登りが好きな人と出会ったときに山の話をおもしろく聞けたり、いっしょに登山用品店へ行きたくなったりするとか。

    社会に出たら、どんな人と出会うかわかりません。自分と好みが違う人に出会ったときに「いやだな」って思うより「へえ!」と思える方が感性の幅が広がります。そうすると今まで自分ができなかったデザインができるようになっていきます。

    分野にとらわれず、人一倍好奇心旺盛な人を本専攻では求めています。

吉良 佑香「DaiLine:Daily × Line」(空デ専攻の優秀賞)

豊永 花音「ヌクイゾク」

  • 卒業後の進路は?

  • 人物
  • 店舗のデザインや商業施設のデザインをしている企業に進む学生が多いですが、リフォームも含め住空間のデザインをしている企業、造形物を制作する企業、家具や照明を扱う企業などにも就職しています。また、分野を飛び越えて、グラフィックデザインやWebデザインをしている卒業生もいますし、起業して飲食店を構える人もいます。ファッション分野ではアパレル企業へ進むほか、ディスプレイデザインの企業に就職する人もいます。

  • インテリアデザインやファッションデザインのこれからは?

  • いま世界各国で共有している目標にSDGsがありますが、日本においてもつくっては壊し、壊してはつくるというやり方に疑問を持つ人々が増えています。そんな中、現在ある建物を活かし室内空間を改修することで新たな使い方ができるようにする需要が増しています。そこにはインテリアデザインがますます求められるでしょう。

    時代とともに求められる服装は変化していきますが、人が何も着ない時代なんて来ないでしょう。そしてファッションを学ぶことは、人そのものを見つめること。ファッションデザインで学んだことを、別の分野で求められてくると思います。