公益財団法人JKAの補助事業(2022M-229)

タイトル
内水氾濫における接続小水路の影響を考慮した防災対策に関する調査研究補助事業

概要
近年,国内各地で多発する線状降水帯等により発生する内水氾濫について,水害が頻発する地域を対象に実地試験を行い発生原因とその対策について検討した内容である.特に,その地域への流入経路である接続小水路の影響を明らかにすることを目的としている.

内容
①テストサイトの概要
調査対象地域は福岡県小郡市福童地区(東経130.54度北緯33.37度)に位置し,河川(宝満川)と九州自動車道により三方を囲まれた平坦地である.現在,スマートIC建設による土木工事等が行われており,一部地形が変化している過程であることが特徴である.
この地域内で最も標高の低い地点に河川へつながる水門があるが,下流の河川水位が上昇した際に湛水型内水氾濫が生じる.近年では,2020年6月27日,7月6~8日,7月14日,2021年8月12~14日に発生しており,いる.で,近年,国内各地で多発する線状降水帯等により発生する内水氾濫について,水害が頻発する地域を対象に実地試験を行い,発生原因とその対策を検討する.特に,その地域への流入経路である接続小水路の影響を明らかにすることを目的としている.具体的には,唯一の流出部である今朝丸水門へ接続している小水路(小河川)の流れを把握することで,内水氾濫の発生機構および対策へつながる知見を得ることが期待される.

②測定システム
計測は複数地点の水位データであり,氾濫が生じた際の各地点の水位変化により流入量を概算する.事前に協力関係にある行政機関(小郡市)との情報交換を行った結果,上流で水路系が複雑に交わっているために少なくとも2系統の河川からの取水を考慮する必要があり,さらに上流10km程度のエリアでの計測を期待しているとのことであった.そのため低コストな計測装置が必要となる.本事業においては,マイコンと超音波式水位センサを用いたバッテリー駆動のスタンドアロン観測装置を製作した.
現地サイトでの予備試験の結果,観測データは10分間に1回とし,データはEPROMに書き込む方法を選択した.当初はSDカードを用いてデータ取り出しを容易にする計画であったが消費電力が大きいためこの方法としている.データ取得にはPCに接続し,シリアル通信にて転送を行っている.
事業協力者である小郡市担当職員らの協力で,計測地点選定・許可・設置協力・データ取得等についてサポートいただいた.

③結果と考察
過去の内水氾濫の多くは雨期から夏期の終わりにかけて台風通過等により発生する線状降水帯に関連があると考えられる.そのため,台風発生時期までにシステムの製作および予備試験を行い,2022年8月12日から順次5地点6ヶ所の設置を行った.台風接近は,9月初旬の11号および中旬の14号が影響が強いと考えられ降雨量も多かった.
しかし,幸いにして本事業で対象とする内水氾濫は生じず,道路冠水が1件発生した.当初の計画通り,この事態に対し計測地点のデータの相違を検討しているが,水位計測のみで流量換算は不確かさが大きい結果となった.また,水路中に設置されている堰の高さ情報の取得および詳細な地形データを構築することで,このような事態への対策も可能であることが分かった.

④今後の展開
本事業に関して最も有効なデータである内水氾濫時のデータを取得するため,継続的に小郡市と協力体制を維持し,夏期を中心に計測行う計画である.このとき,計測およびデータ取得が容易となるようなシステムの改良を行い,必要性に応じて計測地点を拡大する方針である.これらのデータをもとに内水氾濫における接続小水路の影響を明らかにすることができると考えられる.

学会発表等
(1) Daisuke Matsushita, Hokuto Yokoyama, Shotaro Nakagawa, A CONSIDERATION OF THE SMALL HYDROPOWER USAGE TO PREVENT THE FLOOD FROM INLAND WATERS, Grand Renewable Energy proceedings, Grand Renewable Energy 2022 International Conference, Dec. 20, 2022, pp68-71.
(2) 中川, 松下, 内水氾濫における接続小水路の影響についての調査研究, 日本機械学会九州支部九州学生会第54回学生員卒業研究発表講演会, 宮崎大学, No.120, 2023.

成果等説明会
(1) 小郡市役所関連部署における報告会, Mar. 30, 2023.
(2) 小郡市福童地区住民への説明会, May. 17, 2023.